アメリカの高血圧ガイドラインが改定されました。

2017年11月、アメリカ心臓病学会(American College of Cardiolog: ACC)、アメリカ心臓協会(American Heart Association: AHA)のTask Force on Clinical Practice Guidelinesから、「2017 Guideline for High Blood Pressure in Adults」が発表されました。正常血圧の範囲を、従来の140/90mmHgから、新ガイドラインでは、120/80mmHgと新しく定義したことで話題を呼びました。

具体的には、収縮期血圧(Systolic Blood Pressure: SBP)/拡張期血圧(Diastolic Blood Pressure: DBP)が、120mmHg未満かつ80mmHg未満を、正常血圧(Normal Blood Pressure)、SBP 120-129mmHgかつDBP 80mmHg未満を、血圧上昇(Elevated Blood Pressure)、 SBP 130-139mmHg未満またはDBP 80-89mmHgを、ステージ1高血圧(Stage 1 Hypertension)、SBP 140mmHg以上またはDBP 90mmHg以上を、ステージ2高血圧(Stage 2 Hypertension)と分類することが定義されました。アメリカでは、120/80mmHg未満を正常血圧の基準とし、130/80mmHg以上で高血圧症のステージ1として扱おうということになりました。理由は、「Systolic Blood Pressure Intervention Trial: SPRINT」試験という大規模臨床試験で、血圧をより厳格に下げたほうがいいのか(厳格群:管理目標120mmHg未満のIntensive Treatment群)、従来通りでいいのか(通常群:管理目標140mmHg未満のstandard treatment群)とで比較した結果、血圧120/80mmHg未満の厳格群に比べて、120-129/80-84mmHgの群で1.24倍、130-139/85-89mmHgの群で1.56倍、心血管死亡の有意なリスク上昇が認められたという結果になりました。つまり、従来、140/90mmHg未満、問題ないのではないかと考えられていた、130-139/85-89mmHgの血圧でも心血管死亡のリスクが1.56倍あるということが新しくわかり、120/80mmHg未満を正常血圧として新しく定義し、目標値として目指していこうということです。またステージ1高血圧というあくまで診断基準であって、即薬物療法とは言っていません。まずは、食事、運動、禁煙、節酒、減量と、生活習慣の改善が基本であることは今までと変わりません。むしろ、降圧薬が必要になる前に、生活習慣の改善で血圧を下げよう、疾病リスクは少しでも低下させようという発想が合理的というか、アメリカ的なところです。

日本では、「高血圧治療ガイドライン2014」では、降圧目標は140/90mmHgとなっています。日本高血圧学会は見解として、「高血圧治療ガイドライン2014の降圧目標の範囲の中で、より低い血圧値を目指すことを推奨しますが、現段階で個別の降圧目標値の変更を提示するものではありません。」「SPRINTの結果は、糖尿病合併者や脳卒中既往者を除いた50歳以上の高血圧患者に対して、120 mmHg未満を目指すことの妥当性を示していますが、より厳格に降圧する際には、脳・心・腎への有害事象(低血圧、失神、電解質異常、急性腎障害など)について十分に注意する必要があります。」「日本高血圧学会は、SPRINTの結果を重視しますが、本研究はあくまで米国で行われた研究です。日本の高血圧治療ガイドラインの見直しをすべきかどうかについて学会内でさらに議論を続け、併せて、日本人を対象とした同様の研究の必要性について早急に検討を進めたいと思います。」と、ホームページで見解を示しています。次のガイドライン改定、「高血圧治療ガイドライン2019」においてどうなるのかは注目です。

http://www.jpnsh.jp/topics/475.html

日本では、日本高血圧学会が中心となって、「日本版SPRINT研究」という臨床研究がスタートしています。まずは血圧の測定の方法を、自動診察室血圧(Automated Office Blood Pressure: AOBP)として標準化していこうという取り組みで、これは白衣性高血圧、いわゆる白衣効果の影響を避けるため、医師や看護師の目の前ではなく、安静時に自動血圧計で計測する血圧のほうがより実態に近い値が得られるのではないかという考えです。当院においても、白衣性高血圧の影響を避けるため、自動血圧計による血圧測定、及び血圧手帳による家庭血圧の測定を採用しています。

http://www.jpnsh.jp/com_ac_wg2.html

降圧目標について当院としては、「高血圧治療ガイドライン2014の降圧目標の範囲の中で、より低い血圧値を目指すことを推奨」、という日本高血圧学会の見解に従い、一人ひとりの生活習慣に合わせて、個別に血圧管理を話し合って行こうと思います。たかが血圧ですが、されど血圧、心血管疾患の大きなリスクの一つです。特に高血圧症はほぼ自覚症状がないので、定期的に家庭血圧を測る習慣が大事です。血圧高値、高血圧症を指摘されていましたら、一度主治医までご相談ください。

「2017 Guideline for High Blood Pressure in Adults」→http://www.acc.org/latest-in-cardiology/ten-points-to-remember/2017/11/09/11/41/2017-guideline-for-high-blood-pressure-in-adults

「New ACC/AHA High Blood Pressure Guidelines Lower Definition of Hypertension」→http://www.acc.org/latest-in-cardiology/articles/2017/11/08/11/47/mon-5pm-bp-guideline-aha-2017

「A Randomized Trial of Intensive versus Standard Blood-Pressure Control The SPRINT Research Group」→http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1511939


当院は循環器科です。循環器科とは心臓と血管を専門に診る診療科です。循環器科の診療範囲を具体的にまとめました。

【循環器科の診療範囲】

・冠動脈疾患、心筋梗塞、狭心症、急性冠症候群

・虚血性心疾患、陳旧性心筋梗塞、心筋梗塞後の管理、抗血小板療法

・慢性心不全の管理

・心筋症(拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、他)

・心臓弁膜症(僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、他)

・人工弁置換術後の管理、抗凝固療法

・不整脈(上室期外収縮、心室期外収縮、房室ブロック、心房細動、他)

・心房細動の抗凝固療法、心原性脳塞栓症の予防

・脳卒中、脳血管障害、脳梗塞(ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症)、脳出血、くも膜下出血、一過性脳虚血発作、脳卒中後の管理、二次予防、再発予防

・高血圧症、二次性高血圧症

・脂質異常症、家族性高コレステロール血症

・糖尿病、糖尿病合併症

・慢性腎臓病

・睡眠時無呼吸症候群

・その他、食事指導、運動指導、禁煙外来、など

以上、心臓と血管を専門に診る診療科が循環器科です。脳梗塞や脳出血等の脳血管障害、脳卒中は神経内科や脳神経外科が診ることも多いですが、血管の故障の予防という意味では一次予防、二次予防としてやるべきことは循環器科と共通です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病等の生活習慣病も循環器病のリスク因子という点で循環器科の守備範囲です。心筋梗塞や脳卒中にならないようにする、なってしまっても再発しないようにする、というのが循環器科の仕事です。

【循環器以外で対応しているもの】

【アンケート】お茶の水循環器科にやってほしいこと→https://goo.gl/thCnVu

アンケートの結果、ご要望いただいたものとして、循環器以外でもご要望の多いものに関してはやっていく方針としました。具体的に、下記、循環器以外で対応しているものを具体的に挙げました。確定診断、鑑別診断、専門的な治療、最先端の治療等、専門的な診療はそれぞれの専門科を受診ください。

・高尿酸血症、痛風

・肝機能障害(専門的な診療は消化器内科を受診ください。)

・慢性胃炎や逆流性食道炎の継続処方(専門的な診療は消化器内科を受診ください。)

・慢性便秘や整腸薬等の継続処方(専門的な診療は消化器内科を受診ください。)

・過敏性腸症候群(過敏性腸症候群専門外来あり)

・一型糖尿病の臨時処方または継続処方(糖尿病専門外来あり)

・甲状腺疾患の継続処方(専門的な診療は内分泌内科等を受診ください。)

・気管支喘息の長期管理薬の継続処方(専門的な診療は呼吸器内科を受診ください。)

・通年性または季節性アレルギーの継続処方(専門的な診療はアレルギー科を受診ください。)

・検診異常の再検査、専門医紹介の相談、他、

【アンケート】お茶の水循環器科にやってほしいこと→https://goo.gl/thCnVu

お茶の水循環器科にやってほしいこと、アンケートを実施中です。出来ること、出来ないこと、ありますが、可能な限りご要望を反映して行きたいと考えています。ぜひご要望をお聞かせいただけますと嬉しいです。

一方で、当院は「一般内科」ではありません。循環器疾患の患者さんは感染症に掛かってしまうと重症化してしまう恐れがあります。院内感染対策の観点から、発熱や咳等の感染症を疑う症状を認める場合は原則的に一般内科等を受診ください。具体的には、発熱、インフルエンザ、咳等は「一般内科」、扁桃炎や副鼻腔炎等は「耳鼻咽喉科」、長引く咳や痰は「呼吸器内科」、吐気や下痢等は「消化器内科」をご受診ください。都内の医療機関探しは、東京都医療機関案内ひまわり(☎ 03-5272-0303)をご活用ください。随時紹介状の発行も行っていますのでお気軽にご相談ください。ご理解とご協力のほどよろしくお願いいたします。


 

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