2018/8/25(土)、ヨーロッパ心臓病学会の心筋梗塞の第4版ユニバーサル定義「Fourth universal definition of myocardial infarction 2018」の内容をまとめました。

2018/8/25(土)、ヨーロッパ心臓病学会の心筋梗塞の第4版ユニバーサル定義「Fourth universal definition of myocardial infarction 2018」の内容をまとめました。
https://academic.oup.com/eurheartj/article/40/3/237/5079081
心筋障害(myocardial injury)、心筋梗塞(myocardial infarction)の診断基準として、心筋障害とは、99%上限参考値(upper reference limit: URL)以上の心筋トロポニン(cardiac troponin: cTn)値の上昇を少なくとも1回以上認めることと定義されました。心筋トロポニン値の上昇や下降が起こった場合に急性の心筋障害を示唆します。急性心筋梗塞のクライテリアとしては以下の5つに分類されました。
まず、「心筋梗塞type 1」「心筋梗塞type 2」「心筋梗塞type 3」の定義として、急性心筋梗塞(acute myocardial infarction)とは、急性の心筋障害で、臨床的に急性の心筋虚血(myocardial ischemia)を認め、かつ、99%上限参考値以上の心筋トロポニン値の上昇または下降を少なくとも1回以上認め、かつ以下のうち1つ以上を認めることと定義されました。
・心筋虚血の症状(Symptoms of myocardial ischaemia)
・心電図所見にて新規の虚血性変化(New ischaemic ECG changes)
・異常Q波の出現(Development of pathological Q waves)
・画像検査にて虚血領域に一致する新規の生存心筋の喪失、新規の壁運動異常の出現(Imaging evidence of new loss of viable myocardium or new regional wall motion abnormality in a pattern consistent with an ischaemic aetiology)
・血管造影または剖検による冠動脈血栓の同定(Identification of a coronary thrombus by angiography or autopsy)、「心筋梗塞type 2」「心筋梗塞type 3」を除く
以上の定義から、急性の動脈硬化性の血栓を梗塞心筋領域の供給血管に認める場合を「心筋梗塞type 1」
急性の動脈硬化性血栓に関わらず、心筋酸素供給と需要の不均衡(imbalance between myocardial oxygen supply and demand)を認める場合を「心筋梗塞type 2」
心筋トロポニン値、新規の虚血性変化等の情報なく、心筋虚血が原因であると考えられる心臓死を「心筋梗塞type 3」
と定義します。
次に、冠動脈手技関連した心筋梗塞として「心筋梗塞type 4」「心筋梗塞type 5」を定義します。
経皮的冠動脈形成術(Percutaneous coronary intervention: PCI)関連の心筋梗塞を「心筋梗塞type 4a」
冠動脈バイパス術(Coronary artery bypass grafting: CABG)関連の心筋梗塞を「心筋梗塞type 5」
48時間以内の冠動脈手技関連心筋梗塞として、ベースラインと比べて99%上限参考値以上の心筋トロポニン値の上昇を、「心筋梗塞type 4a」では5倍以上、「心筋梗塞type 5」では10倍以上認める場合と定義します。術前に心筋トロポニン値が上昇している場合には、
術前の心筋トロポニン値が20%の変動以内に安定または低下している場合、ベースラインと比べて5倍または10倍以上変化しているかどうかで評価します。さらに、以下のうち少なくとも1つ以上を満たすこと
・心電図所見上、新規の虚血性変化(この項目は「心筋梗塞type 4a」のみ)
・新規の異常Q波の出現
・画像検査にて虚血領域に一致する新規の生存心筋の喪失、新規の壁運動異常の出現
・血管造影所見にて冠動脈解離(coronary dissection)、太い心外膜動脈の閉塞、側枝の閉塞や血栓、側副血行路の破綻、抹消の塞栓症等の血行障害の合併症
新規の異常Q波の出現は「心筋梗塞type 4a」「心筋梗塞type 5」のクライテリアにおいて、血行再建手技関連の心筋トロポニン値が上昇なのか、高値であっても経皮的冠動脈形成術、冠動脈バイパス術の前よりも低値であるかを評価します。
他の「心筋梗塞type 4」としては、「心筋梗塞type 1」を満たす、ステント血栓症(stent thrombosis)を「心筋梗塞type 4b」、ステント内再狭窄(restenosis)を「心筋梗塞type 4c」に含めます。
死後解剖においてステント関連を認めた場合には、手技関連血栓症は「心筋梗塞type 4a」「心筋梗塞type 4b」に含めます。
先行、無症状(silent)、未認識(unrecognized)の心筋梗塞のクライテリアとしては、下記のどれかを満たすこと
・異常Q波は症状の有無に関わらず非虚血性の原因が否定的であること
・画像検査にて虚血の原因となる生存心筋の喪失を認めること
・過去の心筋梗塞の病理、解剖学的所見を認めること
心筋障害による心筋トロポニン値の上昇の理由としては以下の一覧のように様々なものが原因になります。
https://academic.oup.com/eurheartj/article/40/3/237/5079081

急性心筋虚血に関連した心筋障害
・血栓を伴う動脈硬化性プラークの破綻
酸素供給需要の不均衡による急性心筋虚血に関連した心筋障害
心筋還流の減少
・冠動脈攣縮(Coronary artery spasm)、微小血管障害(microvascular dysfunction)
・冠動脈塞栓症(Coronary embolism)
・冠動脈解離
・持続性の徐脈性不整脈
・低血圧、ショック
・呼吸不全
・重症貧血
心筋酸素需要の増加
・持続性の頻脈性不整脈
・重症高血圧、左室肥大
その他の心筋障害
心臓によるもの
・心不全
・心筋炎
・心筋症(いずれの型においても)
・たこつぼ症候群
・冠動脈血行再建術
・冠動脈血行再建術以外の心臓手術
・カテーテルアブレーション
・除細動ショック
・心挫傷
全身性によるもの
・敗血症、感染性疾患
・慢性腎臓病
・脳卒中、くも膜下出血
・肺塞栓症、肺高血圧症
・浸潤性疾患、アミロイドーシス、サルコイドーシス等
・化学療法薬
・危篤な疾病(Critically ill patients)
・激しい運動(Strenuous exercise)
・他

type 2心筋梗塞の原因も多岐に渡ります。まずは急性心筋虚血を引き起こす臨床経過、病態生理学的機序を考えます。具体的には、他の病気や手技による二次性のもの、胸痛などの臨床経過、病態生理学的機序としては酸素供給需要不均衡(Oxygen supply and demand imbalance)というキーワードになります。確定的な冠動脈の動脈硬化、冠動脈攣縮、冠微小血管障害、冠動脈塞栓症、冠動脈解離、壁内血腫、持続的頻脈性不整脈、重症高血圧、左室肥大、重症徐脈性不整脈、呼吸不全、重症貧血、低血圧、ショックがあります。
詳しくは下記をご覧ください。
https://academic.oup.com/eurheartj/article/40/3/237/5079081
心筋梗塞とは「冠動脈の閉塞」とだけ覚えていると、ヨーロッパ心臓病学会の定義による心筋梗塞の多くを見逃すことになります。特にtype 2の酸素供給需要の不均衡(imbalance)が重要です。冠動脈攣縮によるトロポニン陽性を私自身も経験があるので、冠動脈の所見だけでは判断しないように心掛けています。わかりやすい記事も見つけましたのでご覧ください。
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=11165


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