2020/4/6(月)、SARS-CoV-2に対するサージカルマスクと布マスクの効果を実際に調べた研究「Effectiveness of Surgical and Cotton Masks in Blocking SARS–CoV-2: A Controlled Comparison in 4 Patients」の結果をまとめました。

2020/4/6(月)、SARS-CoV-2に対するサージカルマスクと布マスクの効果を実際に調べた研究「Effectiveness of Surgical and Cotton Masks in Blocking SARS–CoV-2: A Controlled Comparison in 4 Patients」の結果をまとめました。ウイルス性の呼吸器感染症において、一般的にマスクは感染を予防すると考えられていますが、COVID-19において有効かどうかは不明でした。過去の研究からは、サージカルマスク(surgical masks)とN95マスクはインフルエンザウイルスの感染予防において同程度に有効であると報告されています。サージカルマスクとN95マスクが不足している状況で、代替手段として布マスク(cotton masks)にも関心が集まっています。SARS-CoV-2に対してサージカルマスク、布マスクが効果があるか調べるために、韓国、ソウルの2つの病院において、COVID-19感染確定4例を対象に、インフォームドコンセントの後、陰圧隔離室にて、ディスポーザブルサージカルマスク(180×90mm大、3層構造、ポリプロピレンとポリエチレンの内層、ポリプロピレンフィルターの中層、ポリプロピレン外層、KMヘルスケア社製KM Dentalマスク)、再利用可能100%布マスク(160mm×135mm、2層、コットン製、Seoulsa社製)を比較しました。90mm×15mmのペトリ皿に1mLのウイルス輸送培地(ウシ血清アルブミン0.1%、ペニシリン10000U/mL、ストレプトマイシン10mg、アムホテリシンB25 µgを含む無菌リン酸緩衝生理食塩水)を被験者の口から約20cmの位置に固定しました。被験者は、マスクなし、サージカルマスク、布マスク、もう一度マスクなし、それぞれ別々のペトリ皿に向かって5回咳をするように指導されました。マスクの外側、マスクの内側、マスクの表面をスワブで拭いました。鼻咽頭スワブ、唾液中の平均ウイルス量は、5.66 log copies/mL、4.00 log copies/mLでした。咳をした後の平均ウイルス量は、マスクなしで2.56 log copies/mL、サージカルマスクで2.42 log copies/mL、布マスクで1.85 log copies/mLでした。マスクの外側の表面から採取したスワブ全てからSARS-CoV-2が陽性でした。内側の表面からの多くは陰性でした。サージカルマスクも布マスクも感染者の咳からSARS-CoV-2をフィルターすることは効果的でありませんでした。考察としては、SARS-CoV-2のエアロゾルの大きさがインフルエンザウイルスとは同じではないのではないか、0.04μmから0.2 μmmのサイズの粒子はサージカルマスクを貫通すること、2002年から2004年に流行したSARS-CoVのサイズは0.08μmから0.14μmと見積もられていること、外側からは検出されたが内側からは検出されなかった理由としては検体採取の順番、粒子のサイズと咳の速度などが関係しているのではないか、などと考察されています。N95マスク、他のタイプのマスクでは調べていませんでした。マスクが咳の飛距離を縮めるかどうかは調べていません。無症状例や咳をしていない疑い例からの感染を減らす効果があるかどうかはさらなる研究が必要とされます。結論として、サージカルマスク、布マスク、両方とも、COVID-19の咳で環境やマスク外側の表面からSARS-CoV-2の感染を予防するためには効果的ではないと考えられました。
https://annals.org/aim/fullarticle/2764367/effectiveness-surgical-cotton-masks-blocking-sars-cov-2-controlled-comparison
マスクの有効性について実際に感染者にマスクを着けて調べた結果の報告です。咳から検出されたウイルス量はマスクをしなかった場合の2.56と比べると、マスクをした場合の2.42、1.85と若干減っているようにも見えますが、いずれにせよ、マスクをあまり過信しないほうが良さそうです。マスクは効果があるのかどうか色々な議論がありますが、この論文のように実際に調べてみるのが一番良い、論より証拠という研究結果です。


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