2020/4/15(水)、非弁膜症性心房細動の虚血性脳卒中リスク因子に関する日本の研究「Risk Factors Associated With Ischemic Stroke in Japanese Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation」の結果をまとめました。
非弁膜症性心房細動(nonvalvular atrial fibrillation: NVAF)における血栓塞栓症リスク予測に広く用いられているリスク層別化スキームの進歩していますが、アジア人の非弁膜症性心房細動のリスク層別化スキームについてはクリアでは十分ではありません。日本における非弁膜症性心房細動の虚血性脳卒中リスク因子を調べるため、日本における5つの心房細動レジストリ、「J-RHYTHM」(Japanese Rhythm Management Trial for Atrial Fibrillation)レジストリ、伏見AFレジストリ、心研データベース、「Keio Study」(Keio Interhospital Cardiovascular Studies)、北陸Plus心房細動レジストリの症例データからコホート研究を実施しました。心房細動の症例データは、J-RHYTHMレジストリから158施設、伏見AFレジストリから80施設、心研データベースから1施設、Keio Studyから11施設、北陸Plus心房細動レジストリから19施設が参加しました。弁膜症性心房細動、データ欠損があるものは除外しました。2018年から2020年までデータ解析を行いました。調整Cox比例ハザード解析によって虚血性脳卒中の有意なリスク因子を特定しました。結果、全体で非弁膜症性心房細動12289例、女性2758例(31%)、平均年齢70.2歳、平均追跡期間649日、21820人年の追跡の結果、虚血性脳卒中241例が報告されました。登録時における経口抗凝固薬の使用の調整後、虚血性脳卒中に関連したリスク因子は、年齢75-84歳(HR 1.74 95%CI, 1.32-2.30; P < 0.001)、年齢85歳以上(HR 2.41; 1.63-3.56; P <0.001)、高血圧(HR 1.60; 95% CI, 1.15-2.23; P =0.006)、脳卒中の既往(HR 2.75; 95% CI, 2.09-3.62; P <0.001)、持続性または永続性の心房細動(HR 1.59; 95% CI, 1.21-2.10; P =0.001)、BMI 18.5未満(HR 1.55; 95% CI, 1.05-2.29; P =0.03)でした。糖尿病、心不全は虚血性脳卒中のリスク因子としては認められませんでした。脳卒中の既往、年齢、高血圧、持続性または永続性心房細動、BMI低値は、日本人の非弁膜症性心房細動において虚血性脳卒中の独立したリスク因子として認めました。詳しくは論文をご覧ください。
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2764403
非弁膜症性心房細動の心原性脳塞栓症のリスク評価では、「CHADS2スコア」「CHA2DS2-VAScスコア」が有名ですが、日本人に限って解析したところ、糖尿病、心不全は有意差を認めなかったとのことです。逆に、今までは脳梗塞リスクには差がないと言われていた、発作性心房細動、持続性心房細動、永続性心房細動ですが、持続性心房細動、永続性心房細動のほうが脳梗塞リスクが1.59倍という報告は新しい情報です。日本人向けに新しいスコアリングが作られるのか、今後の動向に注目したいところです。
2020/4/15(水)、非弁膜症性心房細動の虚血性脳卒中リスク因子に関する日本の研究「Risk Factors Associated With Ischemic Stroke in Japanese Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation」の結果をまとめました。