2020/5/12、卵円孔開存の心室中隔瘤、シャントサイズと脳卒中リスクとの関係を調べた研究「Atrial Septal Aneurysm, Shunt Size, and Recurrent Stroke Risk in Patients With Patent Foramen Ovale」の結果をまとめました。
卵円孔開存(patent foramen ovale: PFO)関連脳卒中において、大きなシャント(large shunt)、心室中隔瘤(atrial septal aneurysm: ASA)が脳卒中再発のハイリスクではないかと考えられています。卵円孔開存関連脳卒中で、他の原因がなく、薬物療法のもと、卵円孔開存のサイズ、心室中隔瘤の状態が脳卒中の再発にどのような影響を及ぼすのか調べるために、2つの後ろ向き観察研究、2つの無作為化試験の蓄積データから、シャントサイズ、心室中隔瘤の状態を心エコー画像から評価しました。卵円孔開存の解剖学的特徴と虚血性脳卒中の再発との関係は混合エフェクトCoxモデルによって評価しました。結果、898例、平均年齢45.3歳、大きな卵円孔開存で心室中隔瘤あり178例(19.8%)、大きな卵円孔開存なしで心室中隔瘤あり71例(7.9%)、大きな卵円孔開存で心室中隔瘤なし397例(44.2%)、大きな卵円孔開存なしで心室中隔瘤なし252例(28.1%)でした。平均3.8年の追跡期間、脳卒中の再発は47例(5.2%)発生しました。
卵円孔開存のサイズと脳卒中再発との関係は試験によってばらつき(pinteraction = 0.01)がありました。年齢、高血圧、抗血栓薬、卵円孔開存の解剖、心室中隔瘤は脳卒中再発の独立した関連因子(adjusted hazard ratio: 3.27; 95% confidence interval: 1.82 to 5.86; p < 0.0001)でしたが、大きな卵円孔開存(average adjusted hazard ratio across studies: 1.43; 95% confidence interval: 0.50 to 4.03; p = 0.50)は有意な因子ではありませんでした。卵円孔開存関連脳卒中において、心室中隔瘤はシャントサイズと比べて重要な予測因子でした。この結果は薬物療法における脳卒中再発のハイリスク群の特定、卵円孔閉鎖術のベネフィットがある層を特定するのに役立つ可能性があると論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32381162
卵円孔開存は奇異性脳塞栓症という特殊なタイプの脳卒中のリスクの一つですが、卵円孔開存自体は比較的頻度が高いため、卵円孔閉鎖術が全例に必要かどうかはわかっていませんでした。今回、心室中隔瘤の存在が脳卒中再発のリスク因子であることがわかりました。ちなみに、シャントサイズはリスク因子ではなかったとのことでやや意外でした。卵円孔開存関連脳卒中の再発率は3.8年間で5.2%と比較的高いことから、ハイリスク群には卵円孔閉鎖術を検討する参考になるでしょう。詳しくは主治医までご相談ください。