2020/8/21、レニンアンジオテンシン系阻害薬とCOVID-19の重症度に関する日本の研究「Renin-angiotensin system inhibitors and the severity of coronavirus disease 2019 in Kanagawa, Japan: a retrospective cohort study」の要旨をまとめました。

2020/8/21、レニンアンジオテンシン系阻害薬とCOVID-19の重症度に関する日本の研究「Renin-angiotensin system inhibitors and the severity of coronavirus disease 2019 in Kanagawa, Japan: a retrospective cohort study」の要旨をまとめました。2020年2月、横浜港のダイアモンドプリンセスクルーズ船、COVID19流行の初期からCOVID-19の治療に最善を尽くして来ました。動物実験においては、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(angiotensin converting enzyme inhibitors: ACEIs)、アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗薬(angiotensin II type-1 receptor blockers: ARBs)は、アンジオテンシン変換酵素2(angiotensin converting enzyme 2: ACE2)のダウンレギュレーションを抑制することが報告されており、病態の悪化を防ぐ可能性があります。ACE阻害薬、ARBの使用と、COVID-19の臨床経過、予後への影響を調べるために、ポリメラーゼ連鎖反応によってSARS-CoV-2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)が証明された連続151例、平均年齢60歳、日本、神奈川県、6病院に入院、多施設後ろ向き観察研究を実施しました。COVID-19全例において、多変量回帰分析を実施、年齢65歳以上は主要複合転帰と有意に関連(odds ratio (OR) 6.63, 95% confidence interval (CI) 2.28-22.78, P < 0.001)を認めました。院内死亡、体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation: ECMO)、侵襲的または非侵襲的手法も含む機械的換気、集中治療室への入院としました。高血圧、COVID-19で、ACE阻害薬、ARB使用において、年齢、性別、糖尿病の有無の補正後、軽度の見当識障害、精神状態と投薬歴から推定された意識障害等を含む意識障害基準によって定義された意識障害の新規発症または悪化の発生率は有意に低値(OR 0.06, 95% CI 0.002-0.69, P = 0.02)を認めました。結論、年齢はCOVID-19の予後不良の有意な因子でした。ACE阻害薬、ARBは高血圧、COVID-19の意識障害の予防のために有益である可能性がありますと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32820236
COVID-19とレニンアンジオテンシン系阻害薬について、ACE阻害薬、ARBを使用していた場合のほうが意識障害の頻度が低かったという日本からの報告です。さらに、院内死亡(9.5% vs. 16.7%)、人工呼吸器(9.5% vs. 16.7%)、集中治療室への入院(9.5% vs. 22.2%)等の副次評価項目も低値の傾向があったとのことです。悪者扱いから汚名返上を果たしたACE阻害薬、ARBですが、今度は良い影響があるかも知れないという報告です。メディカルトリビューンでも記事になっていました。
https://medical-tribune.co.jp/news/2020/0826531465


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