2020/8/23-9/24、オンラインで開催された「STROKE 2020」(第45回日本脳卒中学会学術集会、第49回日本脳卒中の外科学会学術集会、第36回スパズム・シンポジウム)にて脳出血急性期の血圧管理について調べた研究「ATACH-II」の結果が発表されました。

2020/8/23-9/24、オンラインで開催された「STROKE 2020」(第45回日本脳卒中学会学術集会、第49回日本脳卒中の外科学会学術集会、第36回スパズム・シンポジウム)にて脳出血急性期の血圧管理について調べた研究「ATACH-II」の結果が発表されました。脳出血急性期の降圧目標は、「脳卒中治療ガイドライン2009」では収縮期血圧180mmHg未満でしたが、「INTERACT2」試験等の結果を反映し、「脳卒中治療ガイドライン2015」で140mmHg未満に改訂されました。「ATACH-II」試験は、6カ国(日本、中国、台湾、韓国、アメリカ、ドイツ)、100施設、1000例が参加、日本からは14施設、288例が参加、発症4.5時間以内の脳出血急性期を対象に、収縮期血圧の降圧目標、180mmHg未満、140mmHg未満に無作為化、90日後の神経予後、死亡率、24時間の血腫拡大、7日以内の心血管転帰に関して、今回、日本人288例を含む、アジア人537例(日本、中国、台湾、韓国)と、非アジア人363例(アメリカ、ドイツ)を比較しました。解析の結果、アジア人は非アジアと比べて、転帰不良リスク(相対リスク(RR)0.86、95% CI 0.74~0.99)、死亡リスク(RR 0.19、0.10~0.38)、心血管有害事象(RR 0.45、95% CI 0.27~0.75)が有意に低値でした。24時間の血腫拡大は、アジア人において、140mmHg未満は180mmHg未満と比べて、有意に減少を認めました。メディカルトリビューンでも記事になっていました。
https://medical-tribune.co.jp/news/2020/0924531744
脳出血急性期の血圧管理について、少し昔は脳出血急性期には脳血管の血流を維持するために血圧を過度に降圧しないほうが良いという考え方と、出血しているのだから下げたほうが良いという考え方の両方がありました。また、カルシウム拮抗薬のニカルジピンは血管拡張作用があるので血腫拡大への懸念から出血時には使わないほうが良いのではないかという古い考え方がありました。無作為化試験の結果、脳出血急性期には血圧は降圧したほうが良く、ニカルジピンを投与しても血腫拡大の増加は起こらずにむしろ血腫拡大が減少するということがわかり、ガイドラインが改訂されました。古い慣習、定説に対して、常識を疑い、科学的に検証することの大切さを感じました。


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