2020/8/28、エンパグリフロジンの心不全、心血管、腎転帰に与える効果について調べた研究「Cardiovascular and Renal Outcomes with Empagliflozin in Heart Failure」の要旨をまとめました。

2020/8/28、エンパグリフロジンの心不全、心血管、腎転帰に与える効果について調べた研究「Cardiovascular and Renal Outcomes with Empagliflozin in Heart Failure」の要旨をまとめました。SGLT2阻害薬(Sodium–glucose cotransporter 2 inhibitors)は糖尿病の有無に関わらず心不全入院のリスクを減少します。SGLT2阻害薬の効果のエビデンスは心不全の様々な範囲、駆出率の高度に低下した例も含めて、必要とされています。NYHAクラスII、III、IVの心不全で、駆出率40%以下3730例を対象に、推奨標準治療に加えて、エンパグリフロジン10mg1日1回群とプラセボ群と、無作為化二重盲検試験を実施しました。主要評価項目は心血管死亡、心不全増悪入院の複合としました。16ヶ月の追跡期間中、主要評価項目はエンパグリフロジン群1863例中361例(19.4%)、プラセボ群1867例中462例(24.7%)発生、有意差(hazard ratio for cardiovascular death or hospitalization for heart failure, 0.75; 95% confidence interval [CI], 0.65 to 0.86; P<0.001)を認めました。主要評価項目におけるエンパグリフロジンの効果は糖尿病の有無に関わらず一貫していました。心不全入院の総数は、エンパグリフロジン群はプラセボ群と比べて有意に低値(
hazard ratio, 0.70; 95% CI, 0.58 to 0.85; P<0.001)でした。年間推算糸球体濾過量減少率はエンパグリフロジン群はプラセボ群と比べて有意に抑制(–0.55 vs. –2.28 ml per minute per 1.73 m2 of body-surface area per year, P<0.001)を認めました。エンパグリフロジン群で重大腎事象のリスク減少を認めました。非複雑性性器尿路感染症はエンパグリフロジン群で頻度が多く報告されました。心不全で推奨治療を受けている例において、エンパグリフロジン群はプラセボ群と比べて、糖尿病の有無に関わらず、心血管死亡、心不全入院のリスクが減少しました。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2022190
糖尿病の有無に関わらず、SGLT2阻害薬エンパグリフロジン(ジャディアンス)は心血管疾患、心不全増悪を25-30%抑制しました。心不全の標準治療に上乗せでこれだけの有意差が付くとは驚きです。日本ではまだ糖尿病にしか適応が通っていませんが、今後心不全に適応が通ることは確実でしょう。現在時点においても、糖尿病と心不全の合併例に対してはエンパグリフロジンを使わないという選択肢はないレベルの薬剤になって来ました。詳しくは主治医とご相談ください。


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