2020/11/19、若年、新規発症の1型糖尿病に対するgolimumabとβ細胞機能について調べた研究「Golimumab and Beta-Cell Function in Youth with New-Onset Type 1 Diabetes」の要旨をまとめました。

2020/11/19、若年、新規発症の1型糖尿病に対するgolimumabとβ細胞機能について調べた研究「Golimumab and Beta-Cell Function in Youth with New-Onset Type 1 Diabetes」の要旨をまとめました。1型糖尿病は膵β細胞の進行性の喪失が特徴の自己免疫疾患です。「Golimumab」は、成人、小児において、様々な自己免疫に関与していることがすでに明らかになっている腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor α: TNFα)に対する特異的なヒトモノクローナル抗体です。若年、新規診断の1型糖尿病において、golimumabがβ細胞機能を保護するかどうかは十分にわかっていませんでした。年齢6歳から21歳の小児、若年成人、新規診断の1型糖尿病を対象に、golimumab皮下投与群、プラセボ群、52週間追跡、第II相多施設プラセボ対照二重盲検並行群試験を実施しました。主要評価項目は、52週間後時点における混合食事負荷試験における反応性のCペプチド値の4時間の濃度時間曲線の曲線下面積に基づいて評価、内分泌インスリン生成としました。副次、追加評価項目はインスリン使用、HbA1c値、低血糖事象の数、空腹時プロインスリンCペプチド比、反応性プロファイルとしました。結果、全84例、golimumab群56例、プラセボ群28例に無作為に割り振りました。52週間後時点のCペプチドの4時間曲線下面積の平均値は、golimumab群はプラセボ群と比べて、有意差(0.64±0.42 pmol per milliliter vs. 0.43±0.39 pmol per milliliter, P<0.001)を認めました。両群の良好な血糖コントロールの治療目標達成は、両群間のHbA1c値は有意差を認めませんでした。インスリン使用はgolimumab群はプラセボ群と比べて低下しました。糖化ヘモグロビン値+4倍のインスリン投与量で計算、インスリン投与調整HbA1c値スコア9以下によって定義される部分寛解(partial-remission)反応は、golimumab群43%、プラセボ群7%、差(difference, 36 percentage points; 95% CI, 22 to 55)を認めました。低血糖事象数の平均値は両群間で差を認めませんでした。研究者の最小による有害事象として記録された低血糖事象は、golimumab群12例(23%)、プラセボ群2例(7%)でした。golimumabに対する抗体はgolimumab群群30例に検出され、29例は抗体価は1:1000未満、12例は中和抗体が陽性でした。小児、若年成人、新規診断の1型糖尿病において、golimumabはプラセボと比べて、内因性インスリン生成が良好、外因性インスリンの使用を低下させました。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2006136
1型糖尿病に対する抗TNFα抗体薬「golimumab」の第II相試験の結果です。1型糖尿病は根本治療や進行を遅らせる治療薬は今までありませんでしたが、進行抑制効果を認めたとの報告です。第III相試験に期待です。生きている間に1型糖尿病は治せる病気になる時代がやって来るのかも知れません。


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