2020/11/13-11/17、オンラインで開催された「アメリカ心臓協会学術集会(AHA 2020)」にて、スタチンのノセボ効果について二重盲検で比較した「SAMSON」試験の結果が発表されました。


2020/11/13-11/17、オンラインで開催された「アメリカ心臓協会学術集会(AHA 2020)」にて、スタチンのノセボ効果について二重盲検で比較した「SAMSON」試験の結果が発表されました。スタチンの動脈硬化性心血管事象の一次予防、二次予防における有用性は確立していますが、日常診療において中断の多く薬剤の一つです。スタチンの有名な副作用として横紋筋融解症がありますが、プラセボ効果(placebo effect)の逆で、副作用への不安等を原因として自覚症状が出現することを、ノセボ効果(nocebo effect)と呼びます。「SAMSON」試験では、過去にスタチン投与後2週間以内にスタチンを中止した60例を対象に、アトルバスタチン20mg1日1回投与、プラセボ投与、非投与を一ヶ月ごとに切り替え、アトルバスタチンかプラセボかを二重盲検化、自覚症状の程度を0-100でスケール化、自覚症状によっては中止可能としました。主要評価項目はノセボ比(nosebo ratio)、実薬投与時の自覚症状変化に対するプラセボ投与時の自覚症状変化、ノセボ効果の比としました。結果、12ヶ月追跡完了49例、中止回数71件、スタチン投与時40件、プラセボ投与時31件でした。中止理由は、筋肉痛60%、倦怠感15%、痙攣10%等でした。自覚症状の程度は非投与時8.0、プラセボ投与時15.4、有意差(P<0.001)を認めました。一方で、スタチン投与時16.3、非投与時と比べて有意差(P<0.001)を認めましたが、プラセボ投与時(P=0.39)と比べて有意差を認めませんでした。ノセボ比0.90でした。日経メディカルでも記事になっています。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/202011/567995.html
ノセボ比90%とは、実薬投与時に感じた副作用の自覚症状を100とすると、プラセボ投与時に90副作用の自覚症状を感じていたということです。実臨床においても、スタチン投与開始後に筋肉痛等の症状を訴えるケースは少なくなく、本当にスタチンによる筋障害の可能性は常にあり得るので、まずは採血にて客観的に評価するようにしています。実際は大丈夫なことも多いです。


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