2020/12/1、心筋梗塞後のβ遮断薬のアドヒアランスと心不全、死亡の長期リスクについて調べた研究「Adherence to beta-blockers and long-term risk of heart failure and mortality after a myocardial infarction」の要旨をまとめました。

2020/12/1、心筋梗塞後のβ遮断薬のアドヒアランスと心不全、死亡の長期リスクについて調べた研究「Adherence to beta-blockers and long-term risk of heart failure and mortality after a myocardial infarction」の要旨をまとめました。急性心筋梗塞の初発後、β遮断薬治療のアドヒアランスと心不全、死亡の長期リスクとの関係を明らかにするために、2005年から2010年、スウェーデンにて、心疾患の推奨治療登録、エビデンスベイスドケアの促進、発展のための全国ウェブシステム、初発の急性心筋梗塞にて入院例71638例のうち、院内死亡例、過去の心不全の既往、左室駆出率が不明、登録から1年以内の死亡例を除外、38608例を最終解析の対象としました。処方されたβ遮断薬のアドヒアランスは、全国処方薬登録の登録から1年後、内服している日のカバー率として測定、経過日数のうちの処方がカバーされている日数の日と定義しました。慣例的に、カバー日率の閾値80%以上かどうかで、アドヒアランス良好、アドヒアランス不良と分類しました。退院時、90.6%、36869例がβ遮断薬を処方されていました。1年後、38608例の生存例のうち、31.1%、12013例はβ遮断薬のアドヒアランス不良でした。1年後、駆出率の低下した心不全、駆出率の保たれた心不全は、心不全なし、正常駆出率と比べて、β遮断薬のアドヒアランスが保たれている傾向にありました。結婚していること、同居人がいること、所得が高いこと、高血圧、ST上昇型心筋梗塞、経皮的冠動脈形成術はアドヒアランス良好と関連していました。4年間の追跡において、アドヒアランスは、全死亡低下(hazard ratio (HR) 0.77, 95% confidence interval [CI] 0.71-0.84)、心不全入院、死亡の複合(HR 0.83, 95% CI 0.78-0.89, P value <0.001)の独立した関連因子でした。関係性は良好でしたが、正常駆出率の心不全、心不全なしでは不良でした。急性心筋梗塞後、3分の1近くは、1年後、β遮断薬のアドヒアランス不良でした。アドヒアランスは長期転帰改善の独立した関連因子ですが、しかしながら、正常駆出率の心不全、心不全なしにおいては十分ではありませんでした。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33259148
β遮断薬は心筋梗塞後の必須薬の一つであり、使えない理由がない限りは使います。退院直後は90%以上の高い処方率でしたが、1年後にはアドヒアランス良好は68.9%に低下しており、アドヒアランス不良群において全死亡、心不全入院が増加していたとの報告です。β遮断薬は短期的には劇的な効果は実感出来ないかも知れないですが、長期的には予後改善効果は確実で、継続し続けて欲しい薬の一つです。メディカルトリビューンでも記事になっていました。
https://medical-tribune.co.jp/news/2020/1207533887


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