2021/1/23、2型糖尿病に対して減量手術と従来薬物療法を比較した研究「Metabolic surgery versus conventional medical therapy in patients with type 2 diabetes: 10-year follow-up of an open-label, single-centre, randomised controlled trial」の要旨をまとめました。

2021/1/23、2型糖尿病に対して減量手術と従来薬物療法を比較した研究「Metabolic surgery versus conventional medical therapy in patients with type 2 diabetes: 10-year follow-up of an open-label, single-centre, randomised controlled trial」の要旨をまとめました。糖尿病に対する減量手術の5年間以上追跡の無作為化対照試験のデータはありませんでした。2型糖尿病の治療として、減量手術と薬物療法を比較、10年間追跡評価しました。イタリア、ローマの三次病院にて、2型糖尿病、登録時HbA1c 7.0%超、BMI 35以上を対象に、薬物療法群、ルーワイ胃バイパス術(Roux-en-Y gastric bypass: RYGB)群、コンピュータ化システムによる胆膵路変更術(biliopancreatic diversion: BPD)群に無作為化、10年間追跡、オープンラベル、単施設、無作為化対照試験を実施しました。主要評価項目は2年後の糖尿病の寛解、少なくとも1年間以上の薬物療法なしにHbA1c 6.5%未満、空腹時血糖5.55mmol/Lの状態と定義しました。10年間の解析、意図処理解析にて糖尿病の寛解期間を解析しました。結果、2009年から2011年、72例評価、60例参加しました。10年追跡率は95.0%(57/60)でした。外科的治療群のうち、15例(37.5%)は10年間を通して糖尿病寛解を維持しました。特に、10年寛解率は薬物療法群5.5%(95% CI 1·0–25·7; one participant went into remission after crossover to surgery)、胃バイパス術群50.0%(29·9–70·1)、胆膵路変更術群25.0%(11·2–46·9; p=0·0082)、有意差を認めました。2年後時点で寛解を認めた34例のうち20例(58.8%)は追跡期間中に高血糖を再発、胃バイパス術群52.6%(95% CI 31·7–72·7)、胆膵路変更術群66.7%(41·7–84·8])でした。再発の全例は、しかしながら、10年後、適切な血糖コントール(mean HbA 1c 6·7% [SD 0·2])を維持していました。胃バイパス術群、胆膵路変更術群は、薬物療法群と比べて、糖尿病関連合併症の減少(relative risk 0·07 [95% CI 0·01–0·48] for both comparisons)を認めました。重大有害事象は、胆膵路変更術群にて高い頻度(odds ratio [OR] for BPD vs medical therapy 2·7 [95% CI 1·3–5·6]; OR for RYGB vs medical therapy 0·7 [0·3–1·9])でした。2型糖尿病の長期コントールにおいて、減量手術は従来治療と比べてより有効でした。肥満、2型糖尿病の管理において、臨床家、政策決定者は、減量手術の適応の考慮を検討すべきだろうと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)32649-0/fulltext
肥満、2型糖尿病に対する減量手術の有効性に関するイタリアからの報告です。薬物療法と比べて、糖尿病の寛解率、長期糖尿病の合併症の減少を認めたとの結果です。減量手術というと日本では一般的ではありませんが、糖尿病関連合併症の相対リスク93%減少は驚異的であり、治療選択肢として考慮すべきとまとめています。糖尿病の治療目標は糖尿病合併症の予防であり、合併症の予防効果がより優れているのであれば治療選択肢として考慮する時代がやって来るかも知れません。首都圏では減量手術専門クリニックもあります。詳しくは主治医とご相談ください。

PAGETOP