アルコール摂取について新たなエビデンスが発表されました。アルコール摂取に関しては、「お酒は少量でも身体に悪い」という説と、「お酒は適量であれば健康に良い」という説と、諸説ありましたが、2018/8/23、一つ決定的な論文が発表されました。
「Alcohol use and burden for 195 countries and territories, 1990–2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016」→https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(18)31310-2/fulltext
世界195カ国で、1990年から2016年に渡って、疾病負荷を網羅的に検討した大規模研究で、アルコール摂取と疾病負荷の関係が明らかになりました。結論から言うと、それまで「適量であれば健康に良い」と考えられていたアルコール摂取ですが、「少量であっても健康に悪い」という結論が出てしまいました。酒好きには非常に残念なお知らせです。具体的には、アルコール摂取は動脈硬化性疾患を減らすかも知れないが、それ以上にがんを増やすことが明らかになり、アルコールによる疾病減少効果は相殺され、むしろ疾病を増やす影響のほうが大きいということがわかったのです。そもそも、「適量のアルコールは健康に良い」という説の発端は、「フレンチ・パラドックス」と言い、フランスは動物性脂肪の摂取が多い傾向にも関わらず、心筋梗塞が少ないという報告があり、ワインを好む国民性が関係しているのではないかと説があったのが始まりです。また、他の研究においても、適量のアルコール摂取は心筋梗塞や脳卒中といった動脈硬化性疾患を抑制するという報告があったのですが、因果関係なのか相関関係なのかの結論は出ていなかったのと、動脈硬化性疾患以外の疾患への影響も加味した研究が今までなかったのです。
では、どれくらい疾病リスクが増えるかと言うと、動脈硬化性疾患とがんも含めた総合的な疾病リスクとアルコール摂取量との関係は上図のようになります。1杯をアルコール換算で10gと定義した場合に、一番望ましいのは0杯であり、1杯以上はアルコール摂取量が増加するに従って疾病リスクも増加することがわかります。0杯から1杯まで間であれば、疾病リスクは増えないようにも見え、酒好きとしてのバイアスありありな個人的な意見ですが、1日1杯までなら許容範囲であると解釈していいのではないかと思っています。また、「適量のアルコール摂取は健康に良い」という説は否定されたことが明らかになったので、お酒が嫌いな人が無理をしてお酒を飲む必要はないということも同時にわかります。お酒が好きな人であっても、適量は0杯から1杯まで間、やはり飲み過ぎると疾病リスクは増加することには今まで通り疑問の余地がないので、やはり飲み過ぎは控えたほうがいいという結論になります。私自身も最近飲み過ぎなので控えなくてはと思いました。詳しくは論文原文をご覧ください。
「「お酒は少量なら健康に良い」はウソだった?「海外一流誌」の最新論文をどう読むか」→https://toyokeizai.net/articles/-/235594
また、津川先生のこちらの東洋経済の記事を大いに参考にさせていただきました。一般向けにわかりやすくまとめられています。ご自身の生活習慣を考えるきっかけとしてご参考ください。
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