日本循環器学会/日本心臓血管外科学会「安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン (2018年改訂版)」についてまとめました。

日本循環器学会/日本心臓血管外科学会「安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン (2018年改訂版)」についてまとめました。安定冠動脈疾患に対する血行再建術としては、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)と大きく2つの治療戦略がありますが、それぞれ個別ガイドラインで記載されていました。このたび、PCIとCABGを包括的にまとめたものが今回のガイドライン改訂の背景と経緯です。詳しくは「安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン」をご覧ください。
「安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン (2018 年改訂版)」→http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2018_nakamura_yaku.pdf
今回は、安定冠動脈疾患の血行再建ガイドラインの要点についてまとめようと思います。安定冠動脈疾患(stable coronary artery disease)の評価として、心電図、運動負荷心電図に加えて、冠動脈CT、薬物負荷心筋SPECT、薬物負荷心エコー法、血流予備量比CT(FFR-CT)が有用で、冠動脈造影を行う場合には血流予備量比(FFR)、瞬時血流予備量比(iFR)等による機能的虚血の評価が重要であることが、DEFER試験、FAME試験、CVIT-DEFER試験等で示されています。
OMT(optimal medical therapy)とは、PCIを行うかCABGを行うかに関わらずに行うべき生活習慣の改善や冠危険因子への介入も含めた包括的な治療指針で、禁煙、体重管理、運動療法に始まり、薬物療法としては、硝酸薬、β遮断薬、Ca拮抗薬、ニコランジル、さらには高血圧症、糖尿病、脂質異常症等の冠危険因子があればそれぞれ介入の重要性が強調されました。
血行再建の適応としては、虚血の証明された病変、症状の改善または心血管イベント予防による予後改善を目的として行うことが原則であり、リスク評価の指標として、SYNTAXスコアやSYNTAXスコアIIが提唱されました。具体的には、SYNTAXスコアは、左冠動脈と右冠動脈の優位性、主幹部病変、三枝病変、完全閉塞病変、高度屈曲病変、高度石灰化、分岐部病変、冠動脈内血栓などからなるスコアリングシステムで、冠動脈病変の解剖学的な複雑性や広がりの重症度の指標です。さらにSYNTAXスコアに加えて、年齢、腎機能、心機能、主幹部病変、末梢動脈疾患、性別、慢性閉塞性肺疾患などの全身因子を加味したスコアがSYNTAXスコアIIです。詳しくはSYNTAXスコアのページをご覧ください。
http://www.syntaxscore.com

安定冠動脈疾患の血行再建に関する推奨とエビデンスレベルについて、上記のようにまとめられました。今回のガイドライン改訂ではこのようにPCIとCABGを包括的に整理されたことが一番の特徴です。さらに、特殊な病態における血行再建として、心不全例、低心機能例、糖尿病合併例、慢性腎臓病合併例、弁疾患合併例、末梢動脈疾患合併例、再血行再建、心房細動合併例などについて記載されました。PCI後の再狭窄としては、フォローアップ冠動脈造影の意義、PCI 後の再狭窄例に対する再 PCIなどが記載されました。
ステント血栓症は、発症時期による分類、早期ステント血栓症(early stent thrombosis: EST):ステント留置後1ヵ月以内、遅発性ステント血栓症(late stent thrombosis: LST):ステント留置後1ヵ月~1年、超遅発性ステント血栓症(very late stent thrombosis: VLST):ステント留置後1年以後、の3つに分類され、この中で早期ステント血栓症は抗血小板薬二剤併用療法(DAPT)によって減ったが、超遅発性ステント血栓症が問題となっており、ステント血栓症の予防には良好なステント留置と適切な抗血小板療法が重要で、特に合併症や自己判断による抗血小板薬の中止は避けるべきであると記載されています。さらに、CABG後のグラフト不全に対しての再CABG、CABGの手技、PCIの手技について詳細な記載があります。機能的狭窄度評価(虚血の評価)に基づくPCI、 橈骨動脈アプローチを優先すること、すべてのPCIにおいてDESを第1選択とすること、などが改めて推奨されています。
最後に、興味深いテーマとして費用に関する考察として、医療の価値の評価の指標として「質調整生存年」(QALY)、医療の費用対効果の指標として1QALY伸ばすための費用の「増分費用効果比」(ICER)が紹介されています。FAME2試験では、安定冠動脈疾患に対して、FFRの結果に基づき第2世代薬剤溶出性ステント(DES)を用いて行われたPCIが、薬物治療単独と比較して心血管イベント を減少させることが示され、初期治療に要した平均費用はPCIのほうが高額であったが、3年の段階で両群の費用は同等(PCI 16,792ドル、薬物治療単独16,737ドル、P=0.94)で、薬物治療単独と比較したFFRガイド下PCIの費用対効果は, 1QALY得るためのICERが2年の段階で17,300ドル、3年の段階ではさらに低額となる1600ドルであり、FFRによる虚血評価に基づいたPCIは薬物治療単独と比較して長期アウトカムを改善するだけでなく、経済面でもメリットがあることが示唆される、まとめられています。このように臨床的な効果だけではなく、費用対効果の側面からも考えていく必要があるという内容がガイドラインに掲載されたというのは画期的なことかと思います。さらにガイドラインでは、造影剤腎症、周術期の薬物療法、将来展望としてロボットPCI、ハイブリッド冠動脈血行再建、低侵襲CABG、心筋再生など多岐に渡る内容となっています。詳しくは「安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン」をご覧ください。
「安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン (2018 年改訂版)」→http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2018_nakamura_yaku.pdf

【お茶の水循環器内科】

お茶の水循環器内科は循環器専門の医療機関です。主な対象は狭心症、心筋梗塞等の冠動脈疾患、心房細動を始めとする不整脈、心血管疾患の危険因子としての高血圧症、脂質異常症、糖尿病等の生活習慣病、慢性心不全等の循環器疾患です。一般的な内科診療は行っていませんので予めご了承ください。都内の医療機関探しは東京都医療機関案内サービスひまわりをご活用ください。
東京都医療機関案内サービスひまわり:03-5272-0303
https://www.himawari.metro.tokyo.jp/qq13/qqport/tomintop

【お茶の水循環器内科院長挨拶】

お茶の水循環器内科院長の五十嵐健祐です。お茶の水循環器内科は循環器専門の医療機関です。当院は2014年秋、「心血管疾患の一次予防」を理念に神田小川町でスタートしました。2016年春、現在の神田神保町にお引越し、2018年春、「その医療は心筋梗塞を減らすだろうか?」という行動規範のもと、循環器専門の医療機関になりました。世の中には救える病気とそうでない病気があります。その中で、心筋梗塞と脳卒中は血管の故障が原因であり、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、心房細動等の心血管疾患の危険因子をコントロールすることで十分に予防可能です。心血管疾患の危険因子に対して適切な治療開始と治療継続のためにお茶の水循環器内科は夜間も土日も診療をオープンにしています。世の中から救えるはずの病気をなくすこと、これが当院のミッションです。お茶の水循環器内科をよろしくお願いいたします。
お茶の水循環器内科院長五十嵐健祐

【お茶の水循環器内科の具体的な診療範囲】

お茶の水循環器内科は循環器専門の医療機関です。循環器内科とは心臓と血管を専門に診る診療科です。具体的には、狭心症、心筋梗塞等の冠動脈疾患、心房細動を始めとする不整脈、心血管疾患の危険因子としての高血圧症、脂質異常症、糖尿病等の生活習慣病、慢性心不全等の循環器疾患です。循環器内科の診療範囲を具体的にまとめました。
・冠動脈疾患(急性心筋梗塞、労作性狭心症、冠攣縮性狭心症、他)
・心筋梗塞後、ステント留置後の管理、抗血小板療法、バイパス術後の管理
・慢性心不全の管理
・心筋症(肥大型心筋症、拡張型心筋症、高血圧性心肥大、他) 
・心臓弁膜症(僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、他)
・弁置換術後の管理、弁形成術後の管理、抗凝固療法
・不整脈(心房細動、房室ブロック、上室期外収縮、心室期外収縮、他)
・心房細動の抗凝固療法、心原性脳塞栓症の予防、アブレーション治療適応の評価、アブレーション治療後の管理
・脳卒中、脳血管障害、脳梗塞(ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症)、脳出血、くも膜下出血、一過性脳虚血発作、脳卒中後の管理
・大動脈瘤、大動脈解離後の管理 
・高血圧症、二次性高血圧症
・脂質異常症、家族性高コレステロール血症
・2型糖尿病、1型糖尿病、インスリン管理、糖尿病合併症の管理
・慢性腎臓病、腎硬化症の管理、糖尿病性腎症の管理
・その他、健診後の再検査、食事指導、運動指導、禁煙外来、など
以上、心臓と血管を専門に診る診療科が循環器内科です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病等の生活習慣病も心血管疾患の危険因子として循環器内科の守備範囲です。心筋梗塞や脳卒中にならないようにする、一度なってしまっても再発しないようにする、というのが循環器内科の仕事です。予防に勝る治療はありません。お茶の水循環器内科までお気軽にご相談ください。

【循環器内科.com】
循環器内科.comはお茶の水循環器内科が運営する循環器内科を中心とした医療情報サイトです。循環器内科はどうしても専門的な用語や概念が多く登場し、わかりにくいところが多いですが、正確で情報を整理しておきたいという気持ちで循環器内科.comを始めました。リンクがまだないものはこれから執筆予定のもので、日々更新中です。内容についてわからない点があればお茶の水循環器内科までご相談ください。
循環器内科.com→http://循環器内科.com 
【冠動脈疾患】
代表的な診療の流れ→http://循環器内科.com/flow
胸痛の診療の進め方→http://循環器内科.com/chestpain
急性冠症候群→http://循環器内科.com/acs
急性心筋梗塞→http://循環器内科.com/ami
不安定狭心症→http://循環器内科.com/uap
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冠動脈カテーテル治療→http://循環器内科.com/pci
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心電図→http://循環器内科.com/ecg
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【不整脈関係】
動悸の診療の進め方→http://循環器内科.com/palpitation
期外収縮の診療の仕方→http://循環器内科.com/pc
洞不全症候群→http://循環器内科.com/sss
発作性心房細動→http://循環器内科.com/paf
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上室期外収縮→http://循環器内科.com/pac 
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カテーテルアブレーション→http://循環器内科.com/abl
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心肺蘇生→http://循環器内科.com/cpr
【心不全関係】
息苦しさの診療の進め方→http://循環器内科.com/dyspnea
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心臓弁膜症→http://循環器内科.com/vhd
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大動脈弁狭窄症→http://循環器内科.com/as
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肥大型心筋症→http://循環器内科.com/hcm
拡張型心筋症→http://循環器内科.com/dcm
感染性心内膜炎→http://循環器内科.com/ie
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BNP→http://循環器内科.com/bloodtest 
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【冠危険因子】
高血圧症→http://循環器内科.com/ht
二次性高血圧症→http://循環器内科.com/sht
高血圧緊急症→http://循環器内科.com/he
脂質異常症→http://循環器内科.com/dl
家族性高コレステロール血症→http://循環器内科.com/fh
糖尿病→http://循環器内科.com/dm
1型糖尿病→http://循環器内科.com/t1d
高尿酸血症→http://循環器内科.com/hu
肝機能障害→http://循環器内科.com/ld
腎機能障害→http://循環器内科.com/rd
睡眠時無呼吸症候群→http://循環器内科.com/sas
禁煙外来→http://循環器内科.com/smoking
法定検診→http://循環器内科.com/kenshin
検診結果の見方→http://循環器内科.com/kekka
【脳血管疾患】
脳卒中→http://循環器内科.com/stroke
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アテローム血栓性脳梗塞→http://循環器内科.com/atbi
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一過性脳虚血発作→http://循環器内科.com/tia
頸動脈エコー→http://循環器内科.com/cau
頭部CT→http://循環器内科.com/hct
頭部MRI→http://循環器内科.com/hmri
【薬関係】
スタチン→http://循環器内科.com/statin
β遮断薬→http://循環器内科.com/bb
血管拡張薬→http://循環器内科.com/no
抗血栓療法→http://循環器内科.com/att
抗血小板療法→http://循環器内科.com/apt
抗凝固療法→http://循環器内科.com/act
【鑑別疾患・他】
胸部大動脈瘤→http://循環器内科.com/taa
急性大動脈解離→http://循環器内科.com/aad
肺血栓塞栓症→http://循環器内科.com/pte
深部静脈血栓症→http://循環器内科.com/dvt
肺気胸→http://循環器内科.com/ptx
気管支喘息→http://循環器内科.com/ba
肋間神経痛→http://循環器内科.com/icpain
帯状疱疹→http://循環器内科.com/hz
びまん性食道痙攣→http://循環器内科.com/des
逆流性食道炎→http://循環器内科.com/gerd
ピロリ菌→http://循環器内科.com/hp
鉄欠乏性貧血→http://循環器内科.com/anemia
低血圧症→http://循環器内科.com/hypotension
甲状腺機能亢進症→http://循環器内科.com/hypert
甲状腺機能低下症→http://循環器内科.com/hypot
末梢動脈疾患→http://循環器内科.com/pad
胸部CT→http://循環器内科.com/cct
下肢CT→http://循環器内科.com/fct
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