2020/9/23、2型糖尿病、高齢者においてメトホルミンと認知症発症の減少との関係を調べた研究「Metformin use is associated with slowed cognitive decline and reduced incident dementia in older adults with type 2 diabetes: the Sydney Memory and Ageing Study」の要旨をまとめました。

2020/9/23、2型糖尿病、高齢者においてメトホルミンと認知症発症の減少との関係を調べた研究「Metformin use is associated with slowed cognitive decline and reduced incident dementia in older adults with type 2 diabetes: the Sydney Memory and Ageing Study」の要旨をまとめました。2型糖尿病、糖尿病は認知機能低下の加速、認知症リスク上昇と関連しています。メトホルミンの影響、認知症の発症率を増やすのか減らすのかに関しては議論が分かれていました。メトホルミンの使用と、認知症の発症、認知機能の低下との関係を、糖尿病、メトホルミン使用群、非使用群、糖尿病なし群と比較、6年間調べるために、オーストラリア、「the Sydney Memory and Ageing Study」、ベースラインで認知症のない、70歳から90歳の住民1037例、前向き観察研究を実施しました。除外基準は認知症、神経疾患、精神疾患、進行性の悪性腫瘍としました。神経心理検査、2年ごとに認知機能を測定しました。一連の検査は、実行機能、記憶、注意、速度、言語、視空間機能を個別に評価しました。全般性の認知機能を測定しました。認知症の発症は学際的パネルに基づいて診断しました。526例、脳、海馬(hippocampal)、海馬傍回(parahippocampal)の容量をベースライン、2年ごとにMRIによって測定しました。データ解析、年齢、性別、教育、BMI、心疾患、高血圧、脳卒中、喫煙、アポリポ蛋白Eε4変異等、線形混合モデルを使用しました。結果、1037例、糖尿病123例、糖尿病でメトホルミンあり67例は、人口統計的に、糖尿病でメトホルミンなし群、糖尿病なし群と同様でした。糖尿病でメトホルミンあり群は、糖尿病でメトホルミンなし群と比べて、全般性認知機能、実行機能の有意に低下を認めました。認知症の発症は、糖尿病でメトホルミンなし群は、糖尿病でメトホルミンあり群と比べて、有意に上昇(odds ratio 5.29 [95% CI 1.17-23.88]; P = 0.05)を認めました。高齢者、糖尿病でメトホルミンありは、認知機能の低下、認知症の発症リスクは減少しました。糖尿病なしの場合、メトホルミンは認知症の発症と関連があるかどうかは大規模無作為化試験が必要です。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32967921
糖尿病でメトホルミンあり群は、糖尿病でメトホルミンなし群と比べて、糖尿病の発症リスクが81%有意に低下(HR 0.19、95%CI 0.04-0.85、P=0.030)を認めたとの報告です。糖尿病でメトホルミンあり群は、糖尿病なし群と比べて有意差なし(HR:1.74、95%CI:0.52-5.90)、糖尿病でメトホルミンなし群は、糖尿病なし群と比べて有意に上昇(HR 3.03、95%CI 1.17-7.88、P=0.023)でした。日経メディカルでも記事になっていました。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/diabet/202011/567839.html
やはりメトホルミン自体に認知症の発症抑制作用があると考えたほうが良さそうですね。糖尿病がある場合には、メトホルミンを使えない理由がない限り、メトホルミンを使ったほうが良さそうです。


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