2020/3/2(月)、口腔内衛生の改善と糖尿病の新規発症リスクとの関係を調べた研究「Improved oral hygiene is associated with decreased risk of new-onset diabetes: a nationwide population-based cohort study」の結果をまとめました。歯周病(periodontal disease)や口腔内衛生不良(poor oral hygiene)は、一過性の菌血症(transient bacteraemia)や全身性の炎症(systemic inflammation)を惹起し、糖尿病の新規発症(new-onset diabetes)と関連していると言われています。2003年から2006年、韓国において「NHIS-HEALS( National Health Insurance System-Health Screening Cohort)」からデータが揃っている188013例を対象に、韓国疾病分類第6版(Korean Classification of Disease sixth edition) に従って、急性歯周炎(acute periodontitis)、慢性歯周炎(chronic periodontitis)、歯周病(periodontosis)と、歯科医師によって2回以上診断を受けた場合、または診療録に基づいて歯周病に対して治療を受けた記録のある場合を、歯周病の現病歴(presence of periodontal disease)ありと定義しました。口腔内衛生に関わる行動として、歯磨きの回数(number of tooth brushings)、歯科医師の受診、専門家による歯科クリーニング(professional dental cleaning)を歯科検診の問診データから収集しました。喪失歯の本数(number of missing teeth)は歯科検診で歯科医師が確認しました。糖尿病の新規発症については国際疾病分類によって、外来または入院時の血糖降下薬の処方請求データや空腹時血糖7mmol/lによって診断しました。結果、17.5%が歯周病を持っており、中央値10.0年の追跡で31545例に糖尿病の新規発症を認めました。発症率は16.1%(95%CI 15.9% to 16.3%)でした。人口統計、運動習慣、飲酒量、喫煙状況、血管リスク因子、悪性疾患の既往、臨床検査所見等で調整した多変量解析の結果、歯周病の有病率(HR 1.09 95%CI 1.07 to 1.12 p < 0.001)、喪失歯の本数(HR 1.21 95%CI 1.09 to 1.33 p<0.001 p for trend<0.001)は、糖尿病の新規発症と有意な関係を認めました。1日3回以上の歯磨きは糖尿病の新規発症の減少と有意な関係(HR 0.92 95%CI 0.89 to 0.95 p<0.001, p for trend <0.001)を認めました。頻繁に歯磨きをすることは糖尿病の新規発症を減少させる因子の可能性があり、歯周病の現病歴、喪失歯の本数の多さは糖尿病の新規発症を増加させる因子の可能性があり、口腔内衛生を改善することは糖尿病の新規発症リスクを減少させる可能性があると、論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
→https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00125-020-05112-9
歯磨き習慣による口腔内衛生によって糖尿病の新規発症リスクを減らせるかも知れないという研究結果です。昨年末には歯磨きによって心房細動や心不全も減らせるかも知れないという報告もあり、口腔内衛生の重要性のエビデンスが益々蓄積されて来ています。
→https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/2047487319886018
2020/3/2(月)、口腔内衛生の改善と糖尿病の新規発症リスクとの関係を調べた研究「Improved oral hygiene is associated with decreased risk of new-onset diabetes: a nationwide population-based cohort study」の結果をまとめました。