2020/2/10(月)、経カテーテル的大動脈弁置換術の低リスク例についての研究「Transcatheter aortic valve replacement in low risk patients: a review of PARTNER 3 and Evolut low risk trials」の結果をまとめました。

2020/2/10(月)、経カテーテル的大動脈弁置換術の低リスク例についての研究「Transcatheter aortic valve replacement in low risk patients: a review of PARTNER 3 and Evolut low risk trials」の結果をまとめました。経カテーテル的大動脈弁置換術(Transcatheter aortic valve replacement: TAVR)は、重症大動脈弁狭窄症で手術高リスクの場合の主要な治療選択肢となって来ましたが、重症大動脈弁狭窄症で低リスクの場合には、経カテーテル的大動脈弁置換術は外科的大動脈弁置換術(surgical aortic valve replacement: SAVR)の代替手段となりうるかどうか調べるために、「PARTNER 3」試験では、手術低リスクに対して経カテーテル的大動脈弁置換術を行いました。「Evolute low risk」試験では、手術リスクの低い重症大動脈弁狭窄症1468例を対象に、自己拡張型スープラアニュラー型生体弁と外科的大動脈弁置換術を比較しました。平均年齢74歳、STS(Society of Thoracic Surgeons)リスクスコア平均1.9%、経カテーテル的大動脈弁置換術群と外科的大動脈弁置換術に無作為化しました。転帰は24ヶ月以内の死亡、障害を残す脳卒中の複合と、発生率は経カテーテル的大動脈弁置換術群5.3%、外科的大動脈弁置換術群6.7%で、経カテーテル的大動脈弁置換術は外科的大動脈弁置換術と比べて統計学的に非劣性(差 −1.4% 95%CI −4.9 to 2.1 非劣性p>0.999)を認めましたが、優越性は認めませんでした。「PARTNER 3」試験では重症大動脈弁狭窄症で手術低リスク1000例を対象に、バルーン拡張と経カテーテル的大動脈弁置換術群、外科的大動脈弁置換術群に割り振りました。平均年齢73歳、平均STSスコア1.9%、一次転帰は死亡、脳卒中、再入院の複合としました。発生率は経カテーテル的大動脈弁置換術群8.5%、外科的大動脈弁置換術群15.1%で、非劣性、優越性の両方(絶対差 −6.6% 95%CI −10.8 to −2.5 非劣性P<0.001 HR 0.54 95%CI 0.37 to 0.79 優越性P=0.001)を認めました。「Evolute low risk」試験、「PARTNER 3」試験のエビデンスの結果、経カテーテル的大動脈弁置換術は高リスクから中程度リスクの範囲を超えて、低リスク例においても大動脈二尖弁を除いて経大腿アプローチにて外科的大動脈弁置換術と少なくとも同等の適応を拡大しました。「Evolute low risk」試験と「PARTNER 3」試験の臨床関連転帰を含む広範囲なレビューです。詳しくは論文をご覧ください。
http://cdt.amegroups.com/article/view/30626/28185
もともとは手術リスクが高い場合の重症大動脈弁狭窄症のための治療の選択肢として開発された経カテーテル的大動脈弁置換術ですが、低リスクの場合においても有効であったということです。デバイスの進歩や手技の熟練等の影響もあるのでしょう。今までは大動脈弁狭窄症があっても年齢や併存疾患等で手術には至らなかった例も今後は治療の選択肢の一つとして検討してみるのも良いかも知れません。詳しくは主治医までご相談ください。


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