2020/2/25(火)、駆出率が保たれた心不全において冠動脈疾患の状態と心房細動の有無が予後に与える影響について調べた日本の研究「Differential Prognostic Impact of Atrial Fibrillation in Hospitalized Heart Failure Patients With Preserved Ejection Fraction According to Coronary Artery Disease Status – Report From the Japanese Nationwide Multicenter Registry -」の結果をまとめました。

2020/2/25(火)、駆出率が保たれた心不全において冠動脈疾患の状態と心房細動の有無が予後に与える影響について調べた日本の研究「Differential Prognostic Impact of Atrial Fibrillation in Hospitalized Heart Failure Patients With Preserved Ejection Fraction According to Coronary Artery Disease Status – Report From the Japanese Nationwide Multicenter Registry -」の結果をまとめました。
心房細動(Atrial fibrillation: AF)は駆出率の保たれた心不全(heart failure with preserved ejection fraction: HFpEF)における重要な予後決定因子ですが、駆出率の保たれた心不全は冠動脈疾患(coronary artery disease: CAD)の合併症にもよる多様な症候群であり、長期の臨床転帰が心房細動の有無によって影響を受けるかどうかはよくわかっていません。駆出率の保たれた心不全において冠動脈疾患の状態、心房細動の有無は有意な予後の差を決定するか調べるために、日本の408病院、全国多施設登録研究「JASPERレジストリ」から、駆出率の保たれた心不全の例を解析しました。 心房細動の有無と冠動脈疾患の有無によって4つの群に分類しました。一次転帰は全死亡、心不全入院の複合としました。有害事象の発生率は、心房細動なしかつ冠動脈疾患なし群に比べて、心房細動あり冠動脈疾患なし群は有意に増加(P=0.004)を認めました。事前に指定された交絡因子を含む多変量Cox回帰分析では、心房細動あり冠動脈疾患なし群は心房細動の型に関わらず、心房細動なし冠動脈疾患なし群と比べて、有害事象は有意に増加(調整後HR 1.91 95%CI 1.02–3.92)を認めました。対照的に、心房細動あり冠動脈疾患あり群と、心房細動なし冠動脈疾患あり群の間では同程度(調整後HR 1.24 95%CI 0.64–2.47)でした。冠動脈疾患のない駆出率の保たれた心不全において、心房細動は有害事象と独立した関連を認めました。心房細動に対する集中的な管理は、冠動脈疾患のない駆出率の保たれた心不全において有益な影響を及ぼす可能性があると論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/84/3/84_CJ-19-0963/_article/-char/ja
駆出率の保たれた心不全において、心房細動の有無と冠動脈疾患の有無、具体的には、心房細動なし冠動脈疾患なし、心房細動なし、冠動脈疾患あり、心房細動あり冠動脈疾患なし、心房細動あり冠動脈疾患ありの4つの群で比較したところ、心房細動あり冠動脈疾患なし群が最も予後が悪かったという結果です。常識的に考えると、心房細動あり冠動脈疾患あり群が最も重症な印象があるのですが、冠動脈疾患ありで心不全を起こしている場合よりも、冠動脈疾患なしに心房細動の存在のみで心不全を起こしている場合のほうが、心不全は重症化リスクが高いということなんでしょうか。


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