2020/3/18(水)、LDLコレステロール高値におけるInclisiranの第3相試験「Two Phase 3 Trials of Inclisiran in Patients with Elevated LDL Cholesterol: ORION-10 and ORION-11」の結果をまとめました。

2020/3/18(水)、LDLコレステロール高値におけるInclisiranの第3相試験「Two Phase 3 Trials of Inclisiran in Patients with Elevated LDL Cholesterol: ORION-10 and ORION-11」の結果をまとめました。Inclisiranは、PCSK9(proprotein convertase subtilisin–kexin type 9)合成阻害薬です。先行研究ではInclisiranは用量依存的にLDLコレステロールを低下させました。「ORION-10」試験では、動脈硬化性心血管疾患1561例、「ORION-11」試験では、動脈硬化性心血管疾患または動脈硬化性心血管疾患リスクを認める1617例に対して、最大耐量のスタチン治療にてLDLコレステロール高値を認める例を対象に、Inclisiran群と対照群に分け、Inclisiranは1日後、90日後、6ヶ月後に投与、540日後まで追跡しました。エンドポイントは510日後のプラセボと比較したLDLの低下率、90日後から540日後までの時間調整後のLDL低下率としました。結果、ORION-10試験、ORION-11試験、ベースラインにおけるLDLコレステロール値は、7±38.3 mg/dl、105.5±39.1 mg/dl、510日後にはInclisiran投与群でLDLコレステロール値は52.3%低下(95%CI 48.8 to 55.7)、49.9%低下(95%CI 46.6 to 53.1)を認めました。時間調整後も、53.8%低下(95%CI 51.3 to 56.2)、49.2%低下(95%CI 46.8 to 51.6)と、プラセボと比べて有意差(P<0.001)を認めました。有害イベントは、Inclisiran群と対照群で注射部位反応を除いて同様の傾向でした。注射部位反応は多くは軽度で、重度や永続するものはありませんでした。Inclisiranの投与で6ヶ月後のLDLコレステロール値は50%低下を認めました。注射部位反応は対照群と比べてInclisiran群で多く認めました。
https://doi.org/10.1056/NEJMoa1912387
LDLコレステロール低下薬Inclisiranの臨床試験です。低分子干渉RNA(small interfering RNA: siRNA)薬と呼ばれる新しい作用機序の薬で、従来のPCSK9阻害薬が抗PCSK9モノクローナル抗体薬で抗原抗体反応でPCSK9を阻害するのに対して、siRNA薬はRNA干渉という現象を利用し、肝臓においてPCSK9のmRNAの相補配列に結合、PCSK9のmRNAをサイレンシングすることでPCSK9の合成を阻害します。PCSK9阻害薬と同じく注射薬です。LDLコレステロールを50%も低下させるのはすごいですね。


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