2020/2/20(木)、急性虚血性脳卒中治療における神経保護薬nerinetideの効果と安全性について調べた研究「Efficacy and safety of nerinetide for the treatment of acute ischaemic stroke (ESCAPE-NA1): a multicentre, double-blind, randomised controlled trial」の結果をまとめました。

2020/2/20(木)、急性虚血性脳卒中治療における神経保護薬nerinetideの効果と安全性について調べた研究「Efficacy and safety of nerinetide for the treatment of acute ischaemic stroke (ESCAPE-NA1): a multicentre, double-blind, randomised controlled trial」の結果をまとめました。
Nerinetideは、シナプス後肥厚部タンパク95を阻害するエイコサペプチド(eicosapeptide)で、神経保護薬(neuroprotectant)として、動物実験における虚血再灌流モデルにて虚血性脳卒中に対して効果が確認されていました。Nrinetideの有効性と安全性をヒトで検証するために、急性虚血性脳卒中で緊急で血管内血栓回収療法を受けた例を対象に多施設二重盲検下無作為化比較対照試験を実施しました。8カ国、大血管閉塞による急性虚血性脳卒中で12時間以内に治療開始可能な急性期病院48施設、18歳以上の虚血性脳卒中、ASPECTS(Alberta Stroke Program Early CT Score)が4以上、CT血管造影にて中程度から良好に側副血行路が確認出来るものを対象に無作為化、nerinetideを体重で調整して血管内投与、対照群には生理食塩水を投与しました。その後、血管内アルテプラーゼ投与による血栓溶解療法、血管内デバイス治療等を行いました。一次転帰は90日後のmodified Rankin Scale0-2点で定義される良好な神経転帰、二次転帰は神経障害、日常生活における機能自立度、卓越した神経転帰(mRS 0-1)、死亡率としました。年齢、性別、ベースラインのNational Institutes of Health Stroke Scale score、ASPECTS、閉塞部位、アルテプラーゼの使用、デバイスの使用等を調整しました。2017年から2019年まで、1105例が参加、Nerinetide群549例、対照群556例、90日後の神経転帰良好(mRS 0-2)は、Nerinetide群337例(61·4%)、対照群329例(59·2%)で、有意(調整後RR 1.04 95%CI 0.96–1.14 p=0.35)を認めませんでした。二次転帰も両群間で同様でした。アルテプラーゼ非投与群に限定すると、mRS 0-2点はnerinetide群59.3%、プラセボ群49.8%と有意差を認めました。重篤な有害イベントは両群間で差を認めませんでした。Nerinetideは対照群と比べて、血管内血栓溶解療法を行う群において良好な臨床転帰の改善をしませんでした。詳しくは論文をご覧ください。
https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0140673620302580
神経保護薬Nerinetideの治験です。アルテプラーゼの非投与群では改善効果が認められたというところは興味深いですが、一次エンドポイントには差を認めませんでした。


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