2020/3/27(金)、糖尿病を合併した心不全と糖尿病を合併していない心不全において心不全の増悪と心血管死亡に対するダパグリフロジンの効果について調べた研究「Effect of Dapagliflozin on Worsening Heart Failure and Cardiovascular Death in Patients With Heart Failure With and Without Diabetes」の結果をまとめました。

2020/3/27(金)、糖尿病を合併した心不全と糖尿病を合併していない心不全において心不全の増悪と心血管死亡に対するダパグリフロジンの効果について調べた研究「Effect of Dapagliflozin on Worsening Heart Failure and Cardiovascular Death in Patients With Heart Failure With and Without Diabetes」の結果をまとめました。駆出率の低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction: HFrEF)の治療の追加治療として、SGLT2阻害薬(Sodium-glucose cotransporter 2 inhibitors)は糖尿病の合併がない場合でも有効かも知れないと考えられています。駆出率の低下した心不全において、糖尿病ある場合と糖尿病がない場合のダパグリフロジンの効果を評価するために、第3相無作為化試験の探索的研究として20カ国、410施設で、2017年から2018年、ニューヨーク心臓協会分類II度からIV度、駆出率40%以下、NT-proBNP上昇を認める4744例を対象に、従来の治療にダパグリフロジンを追加する群と対照群とに分けました。一次転帰は、心不全増悪、心血管死の複合としました。ベースラインの糖尿病の状態として、HbA1c 5.7未満を糖尿病なし、5.7以上と比較しました。結果、4742例が治験を完了、年齢中央値66歳、女性1109例(23%)、糖尿病なし2605例(55%)でした。糖尿病なしグループにおいて、一次転帰はダパグリフロジン群171例(13.2%)、対照群231例(17.7%)発生、有意差(HR 0.73 95%CI 0.60-0.88)を認めました。糖尿病ありグループにおいて、一次転帰はダパグリフロジン群215例(20.0%)、対照群271例(25.5%)に発生、有意差(HR 0.75 95%CI 0.63-0.90 P value for interaction=0.80)を認めました。糖尿病なしグループのうちHbA1c 5.7%未満のグループでは一次転帰はダパグリフロジン群53例(12.1%)、対照群71例(16.9$)に発生、差(HR 0.67 95%CI 0.47-0.96)を認めました。HbA1c 5.7以上のグループでは一次転帰はダパグリフロジン群118例(13.7%)、対照群160例(18.0%)に発生、有意差(HR 0.74 95%CI 0.59-0.94 P value for interaction=0.72)を認めました。有害事象として、体液量減少(volume depletion)は糖尿病なしグループでダパグリフロジン群の7.3%、対照群の6.1%、糖尿病ありグループでダパグリフロジン群7.8%、対照群の7.8%に報告されました。腎有害事象は糖尿病なしグループでダパグリフロジン群の4.8%、対照群の6.0%、糖尿病ありグループでダパグリフロジンの8.5%、対照群の8.7%に報告されました。駆出率の低下した心不全における探索的研究の結果、推奨された治療にダパグリフロジンを追加した群は、プラセボと比べて、糖尿病の有無に関わらず、心不全増悪、心血管死のリスクを有意に減少させした。詳しくは論文をご覧ください。
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/27639
SGLT2阻害薬のダパグリフロジンが糖尿病の有無に関わらずに心不全に対しても増悪抑制効果があったという驚くべき結果です。作用機序については除水効果という説がありますが、今後の研究が期待されます。糖尿病治療薬としてだけではなく、心不全治療薬としてのSGLT2阻害薬の役割が確立されつつあります。


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