2020/3/30（月）、COVID-19とレニンアンジオテンシンアルドステロン系阻害薬について特別レポート「Renin–Angiotensin–Aldosterone System Inhibitors in Patients with Covid-19」の内容についてまとめました。レニンアンジオテンシンアルドステロン系（renin–angiotensin–aldosterone system: RAAS）は人体生理学において鍵となるプロセスを統合する血管作動性ペプチドの完成されたカスケードです。SARS-CoV-1（Severe acute respiratory syndrome coronavirus 1）とSARS-CoV-2はそれぞれ、2002年から2004年のSARSの流行と、2019年のCOVID-19の大流行の原因で、RAA系と関連があります。アンギオテンシン変換酵素2（angiotensin-converting enzyme 2: ACE2）は、RAA系の活性化と生理的に拮抗する酵素であり、さらにそれだけではなく、2つのSARSウイルスの受容体として機能します。SARSウイルスとACE2との相互作用は、感染性の潜在因子、またRAA系阻害薬の使用はACE2に作用、ACE2発現に変化を及ぼすことは現在流行中のCOVID-19の重症化に関与しないか懸念されています。いくつかのメディアや保険システムでは、予防的またはCOVID-19が疑われる場合にACE阻害薬、アンギオテンシン受容体拮抗薬（angiotensin-receptor blockers: ARBs）を継続中止するようにと求めました。ACE阻害薬、ARBは世界中で頻度が高く使われており、COVID-19における薬剤使用の手引きは緊急で必要とされていますが、ヒトにおけるデータは非常に限られており、このような仮説や懸念を肯定するにも否定するにも不十分であることを強調します。特に、ヒトにおいてRAA系阻害薬がACE2値と活性に与える不確定な効果についての議論と、ACE2は肺損傷において害よりも有益であるかも知れないという代替仮説を提示します。さらに、RAA系阻害薬の中断は、COVID-19の疑いまたは確定例のハイリスク者において害があるかも知れないことを明記します。詳しくは下記をご相談ください。
→https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMsr2005760
ヨーロッパ心臓病学会、アメリカ心臓病協会でも同様のステートメントを発表しています。ヨーロッパ心臓病学会は、2020/3/12、「ACE阻害薬、ARBにおける高血圧委員会の声明」を発表しました。「Position Statement of the ESC Council on Hypertension on ACE-Inhibitors and Angiotensin Receptor Blockers」
→https://www.escardio.org/Councils/Council-on-Hypertension-(CHT)/News/position-statement-of-the-esc-council-on-hypertension-on-ace-inhibitors-and-ang
アメリカ心臓病協会は、2020/3/17、「ACE阻害薬、ARBを内服中でCOVID-19に接触した場合は治療を継続してください。またはかかりつけ医に相談をしてください。」というお知らせを発表しました。
「Patients taking ACE-i and ARBs who contract COVID-19 should continue treatment, unless otherwise advised by their physician」
→https://newsroom.heart.org/news/patients-taking-ace-i-and-arbs-who-contract-covid-19-should-continue-treatment-unless-otherwise-advised-by-their-physician
日本ではそうでもありませんが、海外では大混乱になっているようです。今のところ、ACE阻害薬、ARBが有害という明確なエビデンスもありませんし、もしかしたら有益かも知れないという意見もあります。さらなる情報を待ちたいと思います。最新の情報が分かり次第お知らせします。

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