2020/3/23(月)、多施設救急部におけるカナダ失神リスクスコアの検証研究「Multicenter Emergency Department Validation of the Canadian Syncope Risk Score」の結果をまとめました。

2020/3/23(月)、多施設救急部におけるカナダ失神リスクスコアの検証研究「Multicenter Emergency Department Validation of the Canadian Syncope Risk Score」の結果をまとめました。救急部における失神患者の管理は、実臨床におけて推奨された優れたリスクツールがないためしばしば困難です。救急部の評価では明らかでない場合において、30日重大転帰の予測因子として、カナダ失神リスクスコア(Canadian Syncope Risk Score: CSRS)を検証するために、カナダにて、9施設の前向き多施設コホート研究を実施しました。2014年から2018年まで、16歳以上で24時間以内の失神で救急部を受診を対象としました。ベースラインの特性、カナダ失神リスクスコア、30日重大転帰として、不整脈性(不整脈、不整脈へ対する介入、原因不明の死亡)、非不整脈性(心筋梗塞、器質的心疾患、肺塞栓症、出血)のデータを収集しました。カナダ失神リスクスコアのキャリブレーション、識別、検証を行いました。結果、全体3819例、平均年齢53.9歳、女性2088例(54.7%)、死亡13例(0.3%)を含む30日以内の重大転帰は139例(3.9%)発生しました。検証コホートでは、予測リスクと観察リスクとの間に差を認めなく、キャリブレーションスロープは1.0、曲線下面積は0.91(95%CI 0.88-0.93)でした。30日以内の重大転帰は経験的確率は3.64%(95% CI, 3.09%-4.28%)、モデル化された予測確率は3.17%(95%CI 2.66%-3.77% P=0.26)でした。30日以内の重大転帰は、超低リスク群1631例のうち3例(0.3%)、超ハイリスク群78例のうち40例(51.3%)、有意な増加(Cochran-Armitage trend test P<0.001)を認めました。カナダ失神リスクスコアの他のカテゴリーにおいても同様に有意な増加を認めました。超低リスク、低リスク群からは死亡、心室性不整脈は1例も認めませんでした。閾値スコアとして-1としたところ、3819例中2145例が該当し、感度97.8%(95%CI, 93.8%-99.6%)、特異度44.3%(95% CI, 42.7%-45.9%)でした。カナダ失神リスクスコアの検証は成功、救急部の評価では重大な原因が特定出来なかった例の救急部の管理のガイドとして使用が推奨されます。超低リスク、低リスクの場合は一般的に帰宅可能、一方はハイリスク例は短期入院のためを考慮しても良いでしょう。カナダ失神リスクスコアを導入することは安全性、有効性を向上する可能性がありますと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/article-abstract/2763181
カナダ失神リスクスコアは、血管迷走神経失神の素因、心疾患の病歴、収縮期血圧、トロポニン上昇の有無、QRS波軸異常、QRS幅、QT間隔、血管迷走神経失神の可能性、心原性失神の可能性等から評価するものです。
https://www.mdcalc.com/canadian-syncope-risk-score
スコアの中に、血管迷走神経失神らしさ、心原性失神らしさという項目が入っているのがなんとも言えませんが、救急部では限られた時間やリソースの中でリスクを評価していくことが必要で、失神の原因まで特定出来ないことは少なくありません。危険性が低いと判断されてば、その後外来でゆっくり心電図やホルター心電図等のフォローをしていくことが多いです。詳しくは主治医までご相談ください。


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