2019/10/11(金)、中年期における歩行速度と認知能力、身体機能の関係を調べた研究「Association of Neurocognitive and Physical Function With Gait Speed in Midlife」の結果をまとめました。

2019/10/11(金)、中年期における歩行速度と認知能力、身体機能の関係を調べた研究「Association of Neurocognitive and Physical Function With Gait Speed in Midlife」の結果をまとめました。歩行速度(Gait speed)は、高齢者の機能低下や死亡率のリスク予測因子であることは知られていますが、若年における歩行速度との関係についてはよくわかっていません。幼少期から中年期へ認知能力の低下と幼少期の認知能力不良が関係しているように、歩行速度の遅さは中年期の生物学的加齢を促進してしまうのではないかと仮説を検証するために、1972年から1973年、ニュージーランドのダニーデンで出生したコホート、2019年まで追跡しました。ダニーデン学際的健康成長研究(Dunedin Multidisciplinary Health and Development Study)のデータを用いてコホート研究を実施しました。幼少期の認知機能(neurocognitive functions)、加齢、脳構造、身体、認知機能を調べました。45歳時点における歩行速度を、通常(usual)、同時作業(dual task)、最大歩行速度の3つの環境において測定しました。出生時のコホート研究の参加者1037例、男性535例(51.6%)、45歳時点の生存者997例のうち、904例(90.7%)の歩行速度の測定を行いました。男性455例(50.3%)、白人93%、平均歩行速度は通常1.30 m/s、同時作業1.16 m/s、最大歩行 1.99 m/sでした。歩行速度の遅い群で、身体限界の多さ(標準化回帰係数β −0.27; 95% CI, −0.34 to −0.21; P < .001)、身体機能不良(ie, weak grip strength [β, 0.36; 95% CI, 0.25 to 0.46)、平衡不良(β, 0.28; 95% CI, 0.21 to 0.34)、視覚運動協調不良(β, 0.24; 95% CI, 0.17 to 0.30)、椅子立位機能不良(β, 0.34; 95% CI, 0.27 to 0.40)、2分ステップ試験(β, 0.33; 95% CI, 0.27 to 0.39)は、全ての有意差(P<0.001)を認めました。 多臓器系の生物学的加齢(β, −0.33; 95% CI, −0.40 to −0.27; P < .001)、加齢顔貌(β, −0.25; 95% CI, −0.31 to −0.18; P < .001)、脳容量の低下(β, 0.15; 95% CI, 0.06 to 0.23; P < .001)、大脳皮質厚の減少(β, 0.09; 95% CI, 0.02 to 0.16; P = .01)、大脳皮質表面積の低下(β, 0.13; 95% CI, 0.04 to 0.21; P = .003)、大脳白質高信号領域の増加(β, −0.09; 95% CI, −0.15 to −0.02; P = .01)を認めました。 中年期の四分位範囲の低い群(β, 0.38; 95% CI, 0.32 to 0.44; P < .001)、認知機能が小児期から成人期へ低下を認めた群(β, 0.10; 95% CI, 0.04 to 0.17; P < .001)は、45歳時点で遅い歩行速度を認めました。認知機能の不良が3年分早く現れることと中年期の歩行速度の遅さ(β, 0.26; 95% CI, 0.20 to 0.32; P < .001)は関連していました。成人の歩行速度は老年期の機能状態と関係しており、中年期の加齢、生涯の脳健康にも関係をしていると論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2752818
運動器関係の用語は和訳が微妙なところがあります。歩行速度が原因なのか結果なのか因果関係がわかりにくいところがありますが、45歳時の歩行速度が遅いと、認知機能も身体機能も老化が早いという報告です。


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