2020/3/30、1型糖尿病において心筋自己免疫による心筋機能障害との関係について調べた研究「Cardiac Autoimmunity Is Associated With Subclinical Myocardial Dysfunction in Patients With Type 1 Diabetes Mellitus」の結果をまとめました。

2020/3/30、1型糖尿病において心筋自己免疫による心筋機能障害との関係について調べた研究「Cardiac Autoimmunity Is Associated With Subclinical Myocardial Dysfunction in Patients With Type 1 Diabetes Mellitus」の結果をまとめました。糖尿病性心筋症(diabetic cardiomyopathy)は、糖尿病におおける心不全リスクの増加を説明するとされていますが、1型糖尿病において心筋への影響のメカニズムはよくわかっていません。「DCCT」(Diabetes Control and Complications Trial)では、1型糖尿病の血糖コントロールについて、血糖コントロール不良例では2種類以上の心筋自己抗体が陽性で、シャーガス心筋症の心不全のコホートと似ており、1型糖尿病の心筋機能障害と自己免疫が関係している可能性が浮上して来ました。この仮説を検証するために、DCCT後の追跡研究、「EDIC」(Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications)において、心筋の5つの抗原に対応する自己抗体を心臓MRIにて測定しました。急性心筋梗塞、無症候性心筋梗塞、脳卒中、狭心症、冠動脈血行再建等の心血管イベントの既往ない例の検体を入手可能でした。検体は国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所(national institute of diabetes and digestive and kidney diseases: NIDDK)に保管されており、ジョスリン糖尿病センター(Joslin Diabetes Center)の研究で使用されています。コホートの平均年齢49歳、1型糖尿病と診断を受けてからの期間は28年間、心筋自己抗体は146例(16%)に認めました。102例は1種類陽性、44例(5%)は2種類以上陽性でした。自己抗体1種類陽性、2種類以上陽性で、臨床的特徴は類似していました。自己抗体陰性の場合と比べて、自己抗体陽性の群では、以前から血糖降下療法を受けている場合が多く、微量アルブミン尿、顕性アルブミン尿、グルコヘモグロビン値が高く、収縮期血圧が高い傾向にありました。心筋自己抗体は長期の高血糖状態を反映している可能性もあります。調整モデルにおいて、自己抗体陽性と自己抗体陰性で心臓MRIの所見を大きな差はありませんでしたが、2種類以上の自己抗体陽性群において、左室拡張末期容量、左室収縮期容量、左室重量の増大、左室駆出率の低下を認めました。多変量調整モデルでは、心臓MRIのパラメーターは、2種類以上の自己抗体陽性群は、左室容量、左室重量の増加、左室駆出率の低下の有意差(P<0.001)を認めました。2種類以上の自己抗体陽性群は、完全調整モデルにおいて、収縮末期容量(17.4ml 95CI 13.5-21.3)、左室重量(12.4g 95%CI 6.4-18.5)、左室駆出率(-6.6% 95CI -4.8 to -8.4)を認めました。対照的に、グリコヘモグロビンは拡張末期容量(-2.5ml 95%CI -0.9 to -4.2)と関連してました。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.ahajournals.org/doi/abs/10.1161/CIRCULATIONAHA.119.044539
1型糖尿病は膵島へ対する自己抗体が陽性になりますが、心筋へ対する自己抗体が陽性の例もあり、心機能低下に関連をしているかも知れないという報告です。心筋自己抗体とは、全長ミオシン重鎖6(FL-MYH6)、全長ミオシン重鎖7(FL-MYH7)、ミオシン重鎖6S1セグメント(S1-MYH6)、ミオシン重鎖6のS2セグメント(S2-MYH6)、心筋トロポニンI、の5種類だそうです。ちなみに、シャーガス心筋症は、シャーガス病の原因トリパノソーマへの抗体が心筋を攻撃したものではないかと考えられています。まだまだ未解明な病態がありますね。
https://medical-tribune.co.jp/rensai/2020/0513530132


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