2020/4/14(火)、左室血栓に対する抗血栓療法について調べた研究「Antithrombotic Therapy for Patients With Left Ventricular Mural Thrombus」の結果をまとめました。

2020/4/14(火)、左室血栓に対する抗血栓療法について調べた研究「Antithrombotic Therapy for Patients With Left Ventricular Mural Thrombus」の結果をまとめました。左室血栓(left ventricular thrombus: LVT)の予測、管理については十分に分かっていません。左室血栓の進行に対する抗凝固療法の効果、血栓塞栓症、出血、死亡率に与える左室血栓の退縮効果を明らかにするために、2011年から2018年まで、90065件の一連の心エコー検査のレポートから、左室血栓について検索しました。独立した2名の専門家の画像読影によって左室血栓の確定例のみを対象としました。主要有害心血管事象は、死亡、脳卒中、心筋梗塞、急性末梢動脈塞栓症、大出血事象は、BARC(Bleeding Academic Research Consortium)出血基準3点以上、全死亡と定義しました。結果、左室血栓と確定159例、治療薬はビタミンK拮抗薬(48.4%)、非経口ヘパリン(27.7%)、直接経口抗凝固薬(22.6%)でした。抗血小板療法は67.9%で併用されていました。ベースラインから左室血栓のエリア減少を認めたのは121例(76.1%)、完全な左室血栓の退縮は99例(62.3%)に認め、平均期間は103日間(四分位範囲 32-392日)でした。左室血栓の退縮の発生は、非虚血性心筋症(HR: 2.74; 95% CI: 1.43 to 5.26; p = 0.002)、ベースラインにおける左室血栓のエリアが小さいこと(HR: 0.66; 95% CI: 0.45 to 0.96; p = 0.031)と相関していました。平均632日間の追跡において、主要有害心血管事象の頻度は37.1%、死亡率18.9%、脳卒中13.3%、大出血13.2%でした。主要有害心血管事象は、左室血栓の退縮例の35.4%、左室血栓の永続例の40.0%に発生、有意差(p = 0.203)を認めました。死亡率のリスク低下は、最終的に左室血栓の退縮例において(HR: 0.48; 95% CI: 0.23 to 0.98; p = 0.039)認めました。一方で、左室血栓の永続例において大出血リスクの増加(9.1% vs. 12%; HR 0.34; 95% CI: 0.14 to 0.82; p = 0.011)が認められました。左室駆出率35%以上(HR: 0.46; 95% CI: 0.23 to 0.93; p = 0.029)、3ヶ月以上の抗凝固療法(HR: 0.42; 95% CI: 0.20 to 0.88; p = 0.021)は、主要有害心血管疾患事象の低下の独立因子でした。左室血栓の永続例は主要有害心血管事象のリスク高値と関連していました。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.onlinejacc.org/content/75/14/1676
左室血栓は心機能低下例で多く、抵抗性のこともありますが、3ヶ月以上の抗凝固療法、平均103日間(四分位範囲 32-392日)の抗凝固薬の投与によって、62.3%に完全な左室血栓の退縮を認めたとの報告です。3ヶ月は長いですが、根気よく続ければ血栓は消失するというのは良い研究結果です。今回の研究では、ワルファリンだけでなく、直接経口抗凝固薬も含まれており、直接経口抗凝固薬の血栓消失効果も詳しく知りたいところです。


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