2020/5/19、COVID-19の人工知能による迅速診断は可能か調べた研究「Artificial Intelligence-Enabled Rapid Diagnosis of Patients With COVID-19」の結果をまとめました。COVID-19診断のために、SARS-CoV-2特異的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(reverse transcriptase polymerase chain reaction: RT-PCR)検査は頻繁に使用されますが、結果が出るまでに時間が掛かること、偽陰性の結果の可能性のため除外診断のためには複数回検査が必要とされることがあること、現在検査キットが不足していること等を考慮、COVID-19の迅速で正確な診断のための代替手段が求められています。胸部CTはSARS-CoV-2感染を疑った場合に行われる検査の一つです。早期の段階では放射線所見は正常であることもあるため、CT検査のみでは除外診断のための陰性予測的中率には限界があります。今回、COVID-19陽性例の迅速診断のために、胸部CT所見、臨床所見、既往歴、臨床検査データを組み合わせた人工知能アルゴリズムを開発しました。リアルタイムRT-PCR検査、次世代シークエンシングRT-PCR検査905例のうち、419例(46.3%)はSARS-CoV-2陽性でした。279例のテストセットにて、人工知能システムはAUC 0.92まで到達し、シニアの胸部放射線科医と比較して同等の感度でした。人工知能システムはさらに改善され、胸部CT撮影で正常所見で、RT-PCR検査でCOVID-19陽性であった例の検出において、放射線科医は全てCOVID-19陰性と判定したのに対し、25例中17例(68%)を正しく判定しました。CT撮影と現病歴が入手可能な場合には、今回の人工知能システムはCOVID-19の迅速診断のための助けになるだろうと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32427924
胸部CT、現病歴、他の検査データ等を組み合わせた人工知能システムは、放射線科医と同等の診断精度に到達したばかりでなく、放射線科医が胸部CTにて異常所見が認められないと判定した例に対してもCOVID-19を正しく判定したという論文です。今までの研究においてもCOVID-19を画像データの解析で検出しようという試みはありましたが、画像検査データのみではなく、他の検査データ、現病歴のデータを統合したというのがポイントで、診断精度はさらに向上したという報告です。単一データの判定だけでなく、人間しか出来ないと今まで考えられていた「総合的な判断」も人工知能の守備範囲となって来ました。
2020/5/19、COVID-19の人工知能による迅速診断は可能か調べた研究「Artificial Intelligence-Enabled Rapid Diagnosis of Patients With COVID-19」の結果をまとめました。