2020/5/26、冠微小血管機能障害による狭心症の生理学的分類について調べた研究「Physiological Stratification of Patients With Angina Due to Coronary Microvascular Dysfunction」の結果をまとめました。

2020/5/26、冠動脈の微小血管機能障害による狭心症の生理学的分類について調べた研究「Physiological Stratification of Patients With Angina Due to Coronary Microvascular Dysfunction」の結果をまとめました。冠微小血管機能障害(Coronary microvascular dysfunction: CMD)は冠血流予備量(flow reserve)の減少によって定義されます。機能性(functional)冠微小血管機能障害、構造性(structural)冠微小血管機能障害はそれぞれ正常微小血管抵抗、最小微小血管抵抗の上昇によって説明されます。冠微小血管機能障害の分類を、安静時、最大血流時のメカニズムを解明するために、狭心症があり、安静時、運動負荷時、アデノシン薬物充血時、冠動脈圧、冠動脈血流測定試験によって、閉塞性冠動脈病変がない86例は、冠血流予備量の閾値2.5によって冠微小血管機能障害と対照群に分類、充血時の微小血管抵抗2.5mmHg/cm/sを閾値として、機能性、構造性に分類されました。内皮細胞機能は、アセチルコリン、一酸化窒素生成酵素(nitric oxide synthase: NOS)活性に対する前腕部血流(forearm blood flow: FBF)によって評価、NGモノメチルLアルギニン(NG-monomethyl-L-arginine)に対するFBFの逆数として定義しました。結果、86例のうち冠微小血管機能障害46例、機能性冠微小血管機能性28例、構造性冠微小血管機能障害18例、対照群40例としました。安静時冠血流(coronary blood flow: CBF)は、それぞれ、24.6 ± 2.0 cm/s、16.6 ± 3.9 cm/s、15.1 ± 4.7 cm/sで有意差(p<0.001)を認め、NOS活性はそれぞれ、2.27 ± 0.96、1.77 ± 0.59、1.30 ± 0.16で有意差(p<0.001)を認め、機能性冠微小血管機能障害群は構造性冠微小血管機能障害群と比べて高値でした。構造性冠微小血管機能障害群は機能性冠微小血管機能障害群、対照群と比べて、アセチルコリンFBF増加幅が有意に低値(2.1 ± 1.8 vs. 4.1 ± 1.7 vs. 4.5 ± 2.0; p < 0.001)でした。運動負荷時では、構造性冠微小血管機能障害群は機能性冠微小血管機能障害群、対照群と比べて、酸素需要は有意に高値(rate-pressure product: 22,157 ± 5,497 beats/min/mm Hg vs. 19,519 ± 4,653 beats/min/mm Hg vs. 17,530 ± 4,678 beats/min/mm Hg; p = 0.004)でしたが、安静時冠血流ピーク値は低値でした。機能性冠微小血管機能障害は、NOS活性と関連する安静時血流の上昇が特徴的です。構造性冠微小血管機能障害は内皮機能障害と関連しており、安静時冠血流ピーク値増加幅の減少、運動負荷時の酸素需要の増加を引き起こしています。病態生理学的な分類によって治療、研究のヒントとなるだろうと論文ではまとめています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32439003
冠微小血管機能障害(coronary microvascular dysfunction: CMD)は比較的新しい概念で、微小血管狭心症(microvascular angina)を引き起こしますが、冠動脈CT、通常の冠動脈カテーテル検査等では検出が難しため、診断がなかなか付きにくいという特徴があります。東海大学医学部付属大磯病院では微小血管狭心症の確定診断のための冠動脈カテーテル検査を行っているようです。必要な場合は適宜紹介します。詳しくは東海大学医学部付属大磯病院のホームページをご覧ください。
https://www.tokai.ac.jp/oisohosp/internal_ic05.html


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