2020/5/26、80歳以上の高齢者において降圧薬の減薬と短期的な血圧コントロールとの関係を調べた研究「Effect of Antihypertensive Medication Reduction vs Usual Care on Short-term Blood Pressure Control in Patients With Hypertension Aged 80 Years and Older: The OPTIMISE Randomized Clinical Trial」の結果をまとめました。高齢者においては、多剤併用(polypharmacy)、多併存疾患(multimorbidity)の観点から、ベネフィットとハームを検討、降圧薬の減薬が推奨されることもあります。降圧薬を減薬することは、血圧コントロールに有意な影響を及ぼすかどうか、12週間の追跡で有害事象が発生するかどうかを調べるために、イギリスの69の介護施設にて、「OPTIMISE」(Optimising Treatment for Mild Systolic Hypertension in the Elderly)研究、無作為化非盲検非劣性試験を実施しました。80歳以上で、収縮期血圧150mmHg未満、2種類以上の降圧薬の投与を受けており、プライマリケア医が減薬可能と判断した例を対象としました。2017年から2019年まで追跡しました。1種類の降圧薬を中止する減薬群282例、降圧薬の変更をしない対称群287例、無作為に割り振りました。一次転帰は12週間追跡後の収縮期血圧としました。事前に設定された非劣性マージンは相対リスク0.90としました。二次転帰は降圧薬減薬を維持した割合、血圧の差、フレイル、生活の質、有害事象、重大な有害事象としました。結果、全569例、平均年齢84.8歳、女性276例(48.5%)、登録時の降圧薬は平均2種類でした。534例(93.8%)追跡完了、減薬群229例(86.4%)、対称群236例(87.7%)は、12週間後時点において収縮期血圧150mmHg未満で、有意差(adjusted RR, 0.98 [97.5% 1-sided CI, 0.92 to ∞])を認めませんでした。二次転帰7項目のうち5項目は有意差を認めませんでした。12週間後、187例(66.3%)で減薬が続いていました。収縮期血圧の変化の平均値は、減薬群は対称群と比べて、3.4mmHg(95% CI, 1.1 to 5.8 mm Hg)高値でした。1つ以上の重大な有害事象は、減薬群12例(4.3%)、対称群7例(2.4%)で、調整後相対リスクは1.72(95% CI, 0.7 to 4.3)でした。高齢者で複数の降圧薬の投与を受けている群において、減薬戦略は、対称群と比べて12週間後の収縮期血圧において非劣性を認めました。高齢者の高血圧において、降圧薬を減薬することは、血圧コントロールに重大な影響を及ぼさない可能性を示唆しています。長期臨床転帰についてはさらなる研究が必要です。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32453368
高齢者の高血圧に対して、厳格な血圧コントロールのベネフィットの疑問視、多剤併用、過剰降圧によるデメリット等の議論から、減薬の可能性は重要な課題です。勿論、降圧薬を減薬した分、多少血圧は上がりますが、3.4mmHg程度であったとのことで、許容範囲内ではないかと感じます。血圧をコントロールする目的は、将来の脳血管疾患、心血管疾患を予防したいからであり、年齢、リスク、寿命、本人の嗜好等に応じて柔軟に考えていければ良いのではないかと考えています。詳しくは主治医までご相談ください。
メディカルトリビューンにも記事になっていました。
https://medical-tribune.co.jp/news/2020/0617530611
2020/5/26、80歳以上の高齢者において降圧薬の減薬と短期的な血圧コントロールとの関係を調べた研究「Effect of Antihypertensive Medication Reduction vs Usual Care on Short-term Blood Pressure Control in Patients With Hypertension Aged 80 Years and Older: The OPTIMISE Randomized Clinical Trial」の結果をまとめました。