2020/6/16、急性冠症候群においてチカグレロル単剤療法とチカグレロルとアスピリンの併用療法の出血事象と心血管事象を比較した研究「Effect of Ticagrelor Monotherapy vs Ticagrelor With Aspirin on Major Bleeding and Cardiovascular Events in Patients With Acute Coronary Syndrome: The TICO Randomized Clinical Trial」の結果をまとめました。

2020/6/16、急性冠症候群においてチカグレロル単独療法とチカグレロルとアスピリンの併用療法の出血事象と心血管事象を比較した研究「Effect of Ticagrelor Monotherapy vs Ticagrelor With Aspirin on Major Bleeding and Cardiovascular Events in Patients With Acute Coronary Syndrome: The TICO Randomized Clinical Trial」の結果をまとめました。短期間の抗血小板薬2剤併用療法(dual antiplatelet therapy: DAPT)後、アスピリンを中止することは出血リスクを減らす戦略ですが、急性冠症候群(acute coronary syndromes: ACS)において、チカグレロル単剤療法は十分に評価されていません。急性冠症候群で薬剤溶出性ステント留置を実施した後、抗血小板薬2剤併用療法を3ヶ月行った後、チカグレロル単剤療法へ切り替えることは、チカグレロルベースの抗血小板薬2剤併用療法12ヶ月と比べて、合計の有害臨床事象を減らすかどうか調べるために、韓国にて、2015年から2018年、急性冠症候群で薬剤溶出性ステント留置を受けた3056例を対象に無作為化多施設試験を実施しました。2019年まで追跡しました。抗血小板薬2剤併用療法3ヶ月後チカグレロル単剤療法群1527例、チカグレロルを含む抗血小板薬2剤併用療法12ヶ月群1529例に無作為に割り振りました。主要転帰は1年間の有害臨床事象、出血、主要心脳血管事象(死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、脳卒中、標的血管血行再建)の複合と定義しました。事前設定副次転帰は出血、主要有害心脳血管事象としました。結果、3056例、平均年齢61歳、女性628例(20%)、ST上昇型心筋梗塞36%、2978例が試験を完了しました。主要転帰は、抗血小板薬2剤併用療法3ヶ月後チカグレロル単剤療法群59例(3.9%)、チカグレロルを含む抗血小板薬2剤併用療法12ヶ月群89例(5.9%)に発生、有意差(absolute difference, −1.98% [95% CI, −3.50% to −0.45%]; hazard ratio [HR], 0.66 [95% CI, 0.48 to 0.92]; P = 0.01)を認めました。事前設定副次転帰10項目のうち、8項目は有意差は認めませんでした。大出血は、抗血小板薬2剤併用療法3ヶ月後チカグレロル単剤療法群1.7%、チカグレロルを含む抗血小板薬2剤併用療法12ヶ月群3.0%に発生、有意差(HR, 0.56 [95% CI, 0.34 to 0.91]; P = 0.02)を認めました。大出血、主要心脳血管事象の発生率は、抗血小板薬2剤併用療法3ヶ月後チカグレロル単剤療法群2.3%、チカグレロルを含む抗血小板薬2剤併用療法12ヶ月群3.4%で、有意差(HR, 0.69 [95% CI, 0.45 to 1.06]; P = 0.09)は認めませんでした。急性冠症候群で薬剤溶出性ステント留置を受けた後、3ヶ月の抗血小板薬2剤併用療法後チカグレロル単剤療法を行うことは、チカグレロルを含む抗血小板薬2剤併用療法を12ヶ月と比べて、1年間の大出血、心血管事象の複合転帰において、わずかではありますが、統計的に有意な減少を認めました。試験対象、事象発生率が想定よりも少なかったため、解釈には注意が必要だろうと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32543684
ステント留置後の抗血小板薬2剤併用療法の期間、抗血小板薬の種類に関する無作為化試験です。3ヶ月の抗血小板薬2剤併用療法後、チカグレロル(ブリリンタ)単剤への切り替えで、主要転帰で有意差を認めました。アスピリンとの併用の必要性へまた議論が発生しそうな報告です。


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