2020/7/7、75歳以上におけるスタチンと全死亡、心血管死亡との関係を調べた研究「Association of Statin Use With All-Cause and Cardiovascular Mortality in US Veterans 75 Years and Older」の結果をまとめました。

2020/7/7、75歳以上におけるスタチンと全死亡、心血管死亡との関係を調べた研究「Association of Statin Use With All-Cause and Cardiovascular Mortality in US Veterans 75 Years and Older」の結果をまとめました。75歳以上におけるスタチン治療の動脈硬化性心血管疾患(atherosclerotic cardiovascular disease: ASCVD)の一次予防に関するデータは限られています。75歳以上の動脈硬化性心血管疾患の一次予防、死亡率に対するスタチン使用の役割を評価するために、2002年から2012年、75歳以上の退役軍人のデータを「Veterans Health Administration」を用いて、後ろ向きコホート研究を実施しました。2016年まで追跡継続しました。全てのデータは、メディケア、メディケイド、薬歴データと連結しました。もともと何らかのスタチン使用者を除いて、新規使用者デザインを使用しました。Cox比例ハザードモデルにて、スタチン使用と転帰との関係を評価しました。解析はベースラインの特性によって傾向スコア重複重み付けを実施しました。新規のスタチン処方、主要転帰は全死亡、心血管死亡としました。副次転帰は、動脈硬化性心血管疾患の複合として、心筋梗塞、虚血性脳卒中、冠動脈バイパス術または経皮的冠動脈形成術による血行再建としました。結果、退役軍人32681例、平均年齢81.1歳、男性97%、白人91%、57178例(17.5%)は試験期間内に新規にスタチンを開始しました。中央値6.8年間の追跡期間中、死亡206902例、心血管死53296例、1000人年あたりでは、スタチン使用者78.7、スタチン非使用者98.2で、1000人年あたり19.5の差(95% CI, -20.4 to -18.5])を認めました。心血管死は、1000人年あたり、スタチン使用者22.6、スタチン非使用者25.7で、1000人年あたり3.1の差(95 CI, -3.6 to -2.6])を認めました。動脈硬化性心血管疾患の複合転帰は123 379例発生、1000人年あたり、スタチン使用者66.3、スタチン非使用者70.4で、1000人年あたり4.1の差(95% CI, -5.1 to -3.0])を認めました。傾向スコア重複重み付け適応後、スタチン使用者はスタチン非使用者と比べたハザード比は、全死亡0.75(95% CI, 0.74-0.76)、心血管死亡0.80(95% CI, 0.78-0.81)、動脈硬化性心血管疾患事象の複合0.92(95% CI, 0.91-0.94)でした。アメリカの75歳以上の退役軍人で、登録時に動脈硬化性心血管疾患がない例において、新規にスタチンを使用することは全死亡、心血管死亡のリスク低下と有意に関連を認めました。無作為化臨床試験を始めとしたさらなる研究は高齢者における動脈硬化性心血管疾患の一次予防においてスタチン治療の役割を明確に決定するために必要であろうと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32633800
高齢者へのスタチンは意味はあるのかというよくある疑問ですが、意味があるという結論が出ました。どれくらい意味があるのかというと、心血管死亡20%、全死亡25%減少との報告です。メディカルトリビューンにも記事になっていました。
https://medical-tribune.co.jp/news/2020/0716531010


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