2020/6/25、地域の人口密度、冠動脈形成術の件数と急性心筋梗塞の院内死亡率との関係について調べた研究「In-Hospital Mortality in Acute Myocardial Infarction According to Population Density and Primary Angioplasty Procedures Volume」の要旨をまとめました。

2020/6/25、地域の人口密度、冠動脈形成術の件数と急性心筋梗塞の院内死亡率との関係について調べた研究「In-Hospital Mortality in Acute Myocardial Infarction According to Population Density and Primary Angioplasty Procedures Volume」の要旨をまとめました。地域の人口密度が低いことは急性心筋梗塞の死亡率の高さに関連している可能性があります。日本において、急性心筋梗塞の院内死亡率と、人口密度、経皮的冠動脈形成術の件数の影響を調べるために、救急車で搬送された急性心筋梗塞64414例の後ろ向き研究を実施しました。主要転帰は院内死亡率、平均人口密度は1.147人/平方km(四分位範囲342-5210)でした。人口密度と院内死亡率との間には有意な負の関係(OR for a quartile down in population density 1.086, 95% CI 1.042-1.132, P<0.001)を認めました。人口密度が低い地域ではしばしば経皮的冠動脈形成術の件数が少ない病院へ搬送され、搬送には長距離を要します。多変量解析にて、経皮的冠動脈形成術の件数は院内死亡率と有意な関係を認めましたが、病院への距離は有意ではありませんでした。経皮的冠動脈形成術の件数の多い病院と少ない病院に分けて解析した場合、1年間の経皮的冠動脈形成術の件数115件をカットオフ値とすると、人口密度の低い地域において院内死亡率の増加は、経皮的冠動脈形成術の件数の少ない病院においてのみ観察されました。人口密度の低い地域における急性心筋梗塞の院内死亡率の高さは、経皮的冠動脈形成術の件数の少ない病院に搬送された場合のみに認められ、経皮的冠動脈形成術の件数が多い病院に搬送された場合には認められませんでした。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32461512/
いわゆる過疎地と医療の質との関係について調べた日本の研究です。結果、急性心筋梗塞においては、人口密度が低いか高いかよりも、経皮的冠動脈形成術の件数が多いか少ないかのほうが重要であったという報告です。人口が少ない地域では経皮的冠動脈形成術の件数が少ないことが多いため、結果的に症例経験の量不足から医療の質の低下につながっていた可能性ということで、過疎地そのものが悪いではないという興味深い指摘です。逆に言えば、症例経験が豊富な病院は地域に関わらず信頼出来ると言うことも出来るでしょう。具体的な目安としては年間の症例数が115件、3日に1回前後の頻度で経皮的冠動脈形成術を実施している病院は信頼出来る可能性が高いという報告です。


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