2020/8/8、COVID-19流行と急性冠症候群の入院率、管理の変化に関するイギリスの研究「COVID-19 pandemic and admission rates for and management of acute coronary syndromes in England」の要旨をまとめました。

2020/8/8、COVID-19流行と急性冠症候群の入院率、管理の変化に関するイギリスの研究「COVID-19 pandemic and admission rates for and management of acute coronary syndromes in England」の要旨をまとめました。COVID-19流行国において、急性冠症候群で救急外来を受診数、心臓手術数の減少が報告されています。COVID-19流行の結果、イングランドにおいて、急性冠症候群のタイプ、規模、自然歴、入院期間の変化、院内の管理について調べるために、「Secondary Uses Service Admitted Patient Care database」の記録に基づいて、2019/1/1から2020/3/24まで、イングランドの急性冠症候群の入院データを解析しました。入院時に、ST上昇型心筋梗塞(ST-elevation myocardial infarction: STEMI)、非ST上昇型心筋梗塞(non-STEMI: NSTEMI)、原因不明の心筋梗塞(myocardial infarction of unknown type)、不安定狭心症を含む他の急性冠症候群の4つに分類しました。入院中の血行再建術、冠動脈造影のみで経皮的冠動脈形成術なし、経皮的冠動脈形成術あり、冠動脈バイパス術と特定しました。週ごとの入院数、血行再建術施行数を算出、サブグループごとの週ごとの入院数の減少率、95%CIも算出しました。急性冠症候群の入院数は、2020年2月中旬から減少、2019年のベースラインでは週3017例であったのが、2020年3月待つには週1813例に減少、40%減少(95% CI 37–43)でした。減少は2020年4月と5月には一部回復、2020年3月の最終週は入院数2522例、ベースラインから16%(95% CI 13–20)の減少でした。入院数が減少していた期間において、ST上昇型心筋梗塞、非ST上昇型心筋梗塞を含む全てのタイプの急性冠症候群の入院数が減少していましたが、相対的、絶対的減少が大きかったのは非ST上昇型心筋梗塞で、2019年には週1267例だったのが、2020年3月末では週733例、42%(95% CI 38–46)減少でした。経皮的冠動脈形成術の施行数の減少に関しては、ST上昇型心筋梗塞(438 PCI procedures per week in 2019 vs 346 by the end of March, 2020; percent reduction 21%, 95% CI 12–29)、非ST上昇型心筋梗塞(383 PCI procedures per week in 2019 vs 240 by the end of March, 2020; percent reduction 37%, 29–45)でした。急性冠症候群の入院期間の中央値は、2019年の4日間(IQR 2–9)から2020年3月末の3日間(1–5)まで減少しました。2019年の週平均と比較して、イングランドにおいて、急性冠症候群の入院数は、2020年3月末は減少、2020年5月末には一部回復しました。この時期の入院数の減少は、急性冠症候群による院外死亡、心筋梗塞の長期の合併症、二次予防のための機会の喪失の増加と関連している可能性があります。COVID-19流行が急性冠症候群の管理に与える影響の全体像は今後もアップデートしつつ分析を続ける必要があると論文ではまとめています。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31356-8/fulltext
COVID-19の影響で急性冠症候群の受診が減っているというイギリスからの報告です。やはり感染が怖いとちょっとした胸部症状は様子を見てしまうのはどこの国でも同じなのかも知れません。お茶の水循環器内科の印象としては、1、2ヶ月、少し様子を見ていた方が精査で、心筋梗塞一歩手前、重度の狭心症が危ない状態で見つかることが、ここ7月8月と立て続けに経験しています。心電図、トロポニン、冠動脈CTとまずは検査をするだけですので、自己判断で我慢をせずにご相談ください。


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