2020/8/4、COVID-19流行前と流行中で新規のがんの発見数の変化について調べた研究「Changes in the Number of US Patients With Newly Identified Cancer Before and During the Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Pandemic」の要旨をまとめました。COVID-19流行に対して、アメリカ臨床腫瘍学会「American Society of Clinical Oncology」は、医療システムリソースを節約、医療機関における接触を回避するために、クリニック、検診センターにて行われるマンモグラフィーや内視鏡のようながんのスクリーニング検診を延期するようにと推奨を出しました。ワシントンポストの記事では、心筋梗塞、脳卒中、虫垂炎でさえも病院から消えたと報じています。アメリカの心臓カテーテル室9施設の研究では、命に関わるST上昇型心筋梗塞の治療が38%減少したと報告されています。本研究では、COVID-19流行前と後で、新規のがんの発見数の週毎の変化を解析しました。アメリカにて、2018/1/1から2020/4/18まで、「Quest Diagnostics」検査を受けて、疾病と健康関連問題の国際統計分類「International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems Tenth Revision: ICD-10」のコードに基づいて、6つのがん、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、膵癌、胃癌、食道癌、横断研究を実施しました。2018年1月から、ICD-10に従ったカウントしました。週ごとのカウントは2019年を通じて、2020/4/18まで追跡しました。「STROBE」（Strengthening the Reporting of Observational Studies in Epidemiology）の横断研究の報告ガイドラインに従いました。本研究は検体、情報の採取なく、すでに存在する医療情報のみの分析であるため、「Western Institutional Review Board」の連邦規則集に従って倫理委員会を免除されました。新規の診断数の週ごとの中央値は、Poisson回帰分析、両側t検定による平均年齢、χ二乗検定による性別調整後、2019/1/6から2020/2/29のベースラインの期間と比べて、2020/3/1から2020/4/18のCOVID-19流行期間は、有意な減少（P<0.05）を認めました。データ解析は「SAS Studio 3.6」にて実施、結果、全278778例、ベースライン期間から258598（92.8%）、COVID-19期間から20180（7.8%）、女性209478例（75.1%）、平均年齢66.1歳でした。ベースライン期間において、週ごとの新規発見数の中央値と標準偏差は、乳癌2208（335）、結腸直腸癌946（134）、肺癌695（88）、膵癌271（39）、胃癌96（14）、食道癌94（14）でした。COVID-19流行期間において、週ごとの発見数は6つのがん合計として4310例から2310例へ、46.4%減少、膵癌の24.7%減少（from 271 to 204; P = 0.01）から、乳癌の51.8%減少（from 2208 to 1064; P < 0.001）まで、全てのがんで有意な減少を認めました。COVID-19期間のがんの平均年齢はベースライン期間との差は1年以内でした。COVID-19期間中の食道癌の診断年齢はベースライン期間と比べてわずかに高齢（mean [SD] age, 69.5 [11.0] years vs 68.4 [11.4] years; P = .04）で、他のがんでは若年（eg, breast cancer: mean [SD] age, 63.0 [13.0] years vs 64.3 [12.7] years; P < .001）でした。統計学的に、2つの期間における性別による影響は膵癌を除いて同様で、COVID-19期間と比べてベースライン期間のほうが低率（8083 of 16 268 [49.8%] vs 820 of 1547 [53.0%]; P = .01）でした。減少は2020/3/29の週からはだいたい底になりました。「National Cancer Institute」の流行期間前のデータから週ごとの6つのがんの発生率の推算は、肺癌16%から乳癌42%の順でした。本研究の限界の可能性としては、がんの診断の遅れと転記の関係は診断が初期のステージかどうか、集約的な治療か緩和的な治療か治療の適応にも依存します。この結果は6種類の頻度の高いがんの新規発見が有意に減少していること、他の国においても同様の所見を反映している可能性を示唆します。オランダの「Netherlands Cancer Registry」においても週ごとのがんの発生率は40%減少、イギリスではCOVID-19の診療制限もあるため75%減少が起こりました。市民が社会的距離を取っている間も、がんの進行は停止しません。診断の遅れによって、ステージの進行、臨床転帰の不良につながる恐れがあるでしょう。本研究から推算では、アメリカにて33890例のがん超過死亡の増加の可能性が示唆されています。今回の所見は過去の研究とも一貫しており、診断の遅れという結果に基づいて緊急の対策の必要があることを要請します。対策としては、通院スケジュール自己管理、デザイン性の高い収集プロセスも含む、臨床の遠隔医療（telehealth）、かかりつけ医との相互関係を強化させるようなより実行力のあるデジタルテクノロジーの活用が必要となって来るでしょう。詳しくは論文をご覧ください。
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2768946
COVID-19流行前後とがんの新規発見数の変化について、乳癌、大腸癌、肺癌、膵癌、胃癌、食道癌の合計は46.4%減少していたとのアメリカからの報告です。オランダ、イギリスでも40%から75%の減少だそうです。勿論、がんの発生率が急に減ったとは考えにくいので、がん検診の控えなどから、がんになっても発見されていない人が一定数いるということが推測されます。ヤフーの記事にもなっていました。
「コロナがコロナ以外の疾患に与える影響」
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20200816-00191694
2020/8/4、COVID-19流行前と流行中で新規のがんの発見数の変化について調べた研究「Changes in the Number of US Patients With Newly Identified Cancer Before and During the Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Pandemic」の要旨をまとめました。