2020/8/29、心不全に対するエンパグリフロジンの心血管、腎転帰に対する効果を検討した研究「Cardiovascular and Renal Outcomes with Empagliflozin in Heart Failure: EMPEROR-Reduced Trial」の要旨をまとめました。


2020/8/29、心不全に対するエンパグリフロジンの心血管、腎転帰に対する効果を検討した研究「Cardiovascular and Renal Outcomes with Empagliflozin in Heart Failure: EMPEROR-Reduced Trial」の要旨をまとめました。SGLT2阻害薬(Sodium–glucose cotransporter 2 inhibitors)は、糖尿病の有無に関わらずに、心不全入院を減らすことがわかっています。心不全の様々な病態に特に駆出率が低下した心不全対してのSGLT2阻害薬の効果にはさらなるエビデンスが必要とされています。今回の二重盲検試験では、NYHA機能クラスII、III、IVの心不全で、駆出率40%以下3730例を対象に、推奨治療に加えて、エンパグリフロジン10mg群、プラセボ群に無作為に割り振りました。主要転帰は心血管死、心不全増悪入院の複合としました。結果、中央値16ヶ月追跡期間の間に、主要転帰はエンパグリフロジン群1863例中361例(19.4%)、プラセボ群1867例中462例(24.7%)に発生、25%有意な減少(hazard ratio for cardiovascular death or hospitalization for heart failure, 0.75; 95% confidence interval [CI], 0.65 to 0.86; P<0.001)を認めました。エンパグリフロジンの主要転帰への影響は糖尿病の有無に関わらず一貫していました。心不全入院数はエンパグリフロジン群でプラセボ群と比べて30%有意に減少(hazard ratio, 0.70; 95% CI, 0.58 to 0.85; P<0.001)を認めました。推算糸球体濾過量の年間低下率は、エンパグリフロジン群でプラセボ群と比べて緩徐(slower)で有意差(–0.55 vs. –2.28 ml per minute per 1.73 m2 of body-surface area per year, P<0.001)を認め、エンパグリフロジン治療群で重大な腎転帰リスクの減少を認めました。非複雑性性器感染症(Uncomplicated genital tract infection)はエンパグリフロジン群で多く報告されました。心不全の推奨治療に加えて、エンパグリフロジン群はプラセボ群と比べて、糖尿病の有無に関係なく、心血管死亡、心不全入院のリスクの減少を認めました。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2022190
糖尿病の有無に関係なくエンパグリフロジンの心不全に対する効果を立証した「EMPEROR-Reduced」試験の結果です。糖尿病の有無に関係なく、エンパグリフロジンは心血管死亡、心不全入院を25%有意に減らしました。現在、日本ではエンパグリフロジン(ジャディアンス)は糖尿病治療薬として承認されていますが、糖尿病がある例は勿論のこと、糖尿病なしの心不全に対しても効果があることから心不全治療薬として使えるようになる日も近いでしょう。


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