2020/9/1、アンギオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬とレニンアンギオテンシン系阻害薬の使用、過去の心不全の既往との関係を調べた研究「Angiotensin Receptor-Neprilysin Inhibition Based on History of Heart Failure and Use of Renin-Angiotensin System Antagonists」の要旨をまとめました。

2020/9/1、アンギオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬とレニンアンギオテンシン系阻害薬の使用、過去の心不全の既往との関係を調べた研究「Angiotensin Receptor-Neprilysin Inhibition Based on History of Heart Failure and Use of Renin-Angiotensin System Antagonists」の要旨をまとめました。「PIONEER-HF」(comParIson Of sacubitril/valsartaN versus Enalapril on Effect on nt-pRo-bnp in patients stabilized from an acute Heart Failure episode)試験では、急性非代償性心不全で駆出率が低下した例に対して、サクビトリル・バルサルタンの有効性と安全性を評価しました。過去の心不全の既往、ACE阻害薬、ARBの治療が結果に影響を及ぼしているかどうか調べるために、駆出率40%以下、881例を登録、後ろ向き多施設二重盲検無作為化臨床試験「PIONEER-HF」試験では、入院中のサクビトリル・バルサルタン群440例、エナラプリル群441例、無作為に割り振りました。過去の心不全の既往、新規の心不全の発症か、慢性心不全の増悪か、ACE阻害薬、ARBの使用状況、ACE阻害薬またはARBの使用ありか、ACE阻害薬、ARBの使用なしか、事前指定サブグループ解析を実施しました。結果、登録時において、303例(34%)は新規の心不全で、576例(66%)は慢性心不全の増悪でした。全体で421例(48%)でACE阻害薬またはARBの使用があり、458例(52%)でACE阻害薬またはARBの使用はありませんでした。NT-proBNP(N-terminal pro-B-type natriuretic peptide)は、4つのサブグループ全てで有意に低下(p < 0.001)を認め、サクビトリル・バルサルタン群はエナラプリル群と比べて有意に低下(p < 0.001)を認めました。過去の心不全の既往(p = 0.350)、ACE阻害薬またはARBの使用(p = 0.880)と、サクビトリル・バルサルタン、エナラプリルの心血管死亡、心不全再入院との間に相関関係はありませんでした。有害事象の発生率は4つのサブグループ全てにおいてサクビトリル・バルサルタン、エナラプリル間で同程度でした。急性非代償性心不全入院において、サクビトリル・バルサルタンは安全性、忍容性は高く、エナラプリルと比べて、NT-proBNPの有意な減少、臨床転帰の改善を、過去の心不全の既往の有無、ACE阻害薬、ARBの使用の有無に関係なく認めました。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32854838/
アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬「エンレスト」(サクビトリルバルサルタン)は日本でも今年発売になりました。新薬は発売後1年間は2週間までの処方制限があります。心不全に効果的と見るか、NT-proBNPを下げただけと見るか、今後の国内の使用成績を観察して行きたいところです。



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