2020/9/11、2型糖尿病においてピアメンターによる糖尿病セルフマネジメントの有効性について比較した研究「Effect of Peer Mentors in Diabetes Self-management vs Usual Care on Outcomes in US Veterans With Type 2 Diabetes A Randomized Clinical Trial」の要旨をまとめました。

2020/9/11、2型糖尿病においてピアメンターによる糖尿病セルフマネジメントの有効性について比較した研究「Effect of Peer Mentors in Diabetes Self-management vs Usual Care on Outcomes in US Veterans With Type 2 Diabetes A Randomized Clinical Trial」の要旨をまとめました。糖尿病は重要な公衆衛生課題です。ピアメンタリング(Peer mentoring)は糖尿病の血糖コントロール改善のための低コストな介入の一つです。しかしながら、ピアメンタリングの長期的効果、持続可能モデルの確立は十分に研究されていませんでした。糖尿病の血糖コントロール改善のためのピアサポート介入、メンター経験者が次のメンターとしての役割を担うモデルの効果を評価するために、2012年から2018年まで、Corporal Michael J. Crescenz Medical Centerにて、無作為化臨床試験を実施しました。アメリカ退役軍人、30歳から75歳の2型糖尿病で、HbA1c 8%以上を対象に、第1フェイズとして、以前は血糖コントロール不良であったが、HbA1c 7.5%未満を達成したメンターによるピアサポートを6ヶ月受ける試験、第2フェイズとして、第Iフェイズでメンターを受けた人たちが次の参加者に対して次のメンターとなる試験を行いました。評価項目は6ヶ月後、12ヶ月後の血糖コントロールとしました。2016年から2018年までデータ解析を実施しました。最初のトレーニングセッションを受けて、毎月強化トレーニングを受けたメンターたちは、毎週メンター活動を提供、月あたり20ドルを賞与しました。主要評価項目は6ヶ月後のHbA1cとしました。副次評価項目は12ヶ月後のHbA1c変化、6ヶ月後、12ヶ月後のLDLコレステロール、血圧、糖尿病生活の質、抑うつ症状等としました。結果、第1フェイズ参加者365例、第2フェイズ参加者122例でした。黒人341例(66%)、男性454例(96%)平均年齢60歳でした。第1フェイズにおいて、6ヶ月後のHbA1c変化は、従来治療群(−0.20% 95% CI, −0.46% to 0.06%)、メンター介入群(−0.52% 95% CI, −0.76% to −0.29%)で、有意差(P = .06)には至りませんでした。第2フェイズにおいて、6ヶ月後のHbA1c変化は、従来治療群(−0.46% 95% CI, −1.02% to 0.10%)、メンター介入群(0.08% 95% CI, −0.42% to 0.57%)で、有意差(P = .16)には至りませんでした。副次評価項目、12ヶ月後のHbA1c値には差を認めませんでした。以前のメンターを受けた人がメンターになることのベネフィットはありませんでした。無作為化臨床試験にて、ピアメンタリング介入は6ヶ月後のHbA1c値を改善せず、持続可能なベネフィットにはなりませんでした。詳しくは論文をご覧ください。
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2770539
アルコール依存症等では患者同士のメンタリングの治療における有用性の報告はありますが、2型糖尿病においては差を認めなかったという報告です。食事療法、運動療法等、馴れ合いで緩みが出てしまうのか原因はわかりません。今回、退役軍人、男性96%、男だらけの対象集団だったとのことで、男女混合のピアメンタリングにすれば効果が違ったのではないか等考えたりします。生活習慣病においては患者同士のメンタリングというものがそもそもあまり有効ではないのかも知れません。


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