2020/8/31、コントロール不良の高血圧に対して家庭血圧テレモニタリングと薬剤師による管理と心血管イベント、費用への影響を調べた研究「Cardiovascular Events and Costs With Home Blood Pressure Telemonitoring and Pharmacist Management for Uncontrolled Hypertension」の要旨をまとめました。

2020/8/31、コントロール不良の高血圧に対して家庭血圧テレモニタリングと薬剤師による管理と心血管イベント、費用への影響を調べた研究「Cardiovascular Events and Costs With Home Blood Pressure Telemonitoring and Pharmacist Management for Uncontrolled Hypertension」の要旨をまとめました。コントロール不良の高血圧は心血管疾患の最大の危険因子です。16のプライマリケアクリニックにて、12ヶ月の家庭血圧測定のテレモニタリング(telemonitoring)と薬剤師による管理を行うクラスター無作為化試験にて、従来治療と比べて血圧を低下させることを示しました。5年間に渡る追跡における、心血管イベント(非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心不全入院、冠動脈血行再建、心血管死亡)、費用を検討しました。テレモニタリング介入群228例、心血管イベント15例(心筋梗塞5例、脳卒中4例、心不全5例、心血管死亡1例)が発生、従来治療群222例、心血管イベント26例(心筋梗塞11例、脳卒中12例、心不全3例)が発生しました。心血管複合エンドポイントは、テレモニタリング介入群4.4%、従来治療群8.6%で、有意差(odds ratio, 0.49 [95% CI, 0.21–1.13], P=0.09)を認めました。冠動脈血行再建は、テレモニタリング群2例、従来治療群10例、副次心血管複合エンドポイントは、テレモニタリング群5.3%、従来治療群10.4%で、有意差(odds ratio, 0.48 [95% CI, 0.22–1.08], P=0.08)には至りませんでした。マイクロシュミレーションモデルでは、測定血圧に基づいた予測を大きく超えてイベント発生率に差を認めました。介入費用は2017年、アメリカドルで一人あたり1511ドルでした。5年間のイベント費用の推計は、テレモニタリング群758000ドル、従来治療群1538000ドル、投資利益率(return on investment: ROI)は126%、総費用削減(net cost savings)は1人あたり約1900ドルでした。テレモニタリング、薬剤師の管理は血圧を低下させ、5年間に渡り、心血管イベントを防ぐことで費用を削減する可能性がありました。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.ahajournals.org/doi/abs/10.1161/HYPERTENSIONAHA.120.15492
テレモニタリングと薬剤師による管理を組み合わせることで、血圧コントロールが改善し、実際に心血管イベントが減少、介入の費用対効果としても有望であったというアメリカからの報告です。医療経済学的指標としてナチュラルにROIという評価指標が出て来るあたりがアメリカ的で、テレモニタリングで病気が減るかどうかだけではなく、費用対効果の面の検討まで進んでいることに驚きました。日本のオンライン診療では医師はただ薬を出すだけ、薬剤師もただ処方箋通りに薬を渡すだけになってしまうことが多いのですが、本研究のように血圧のコントロール状況に応じた薬剤師による介入がポイントではないかと感じました。


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