2020/8/30、駆出率の低下した心不全に対するSGLT2阻害薬の効果を検討した2つの試験のメタ解析「SGLT2 inhibitors in patients with heart failure with reduced ejection fraction: a meta-analysis of the EMPEROR-Reduced and DAPA-HF trials」の要旨をまとめました。

2020/8/30、駆出率の低下した心不全に対するSGLT2阻害薬の効果を検討した2つの試験のメタ解析「SGLT2 inhibitors in patients with heart failure with reduced ejection fraction: a meta-analysis of the EMPEROR-Reduced and DAPA-HF trials」の要旨をまとめました。ダパグリフロジンの「DAPA-HF」研究、エンパグリフロジンの「EMPEROR-Reduced」研究にて、SGLT2阻害薬(sodium-glucose co-transporter-2 inhibition)は糖尿病の有無に関わらず、駆出率の低下した心不全の心血管死亡、心不全入院の複合リスクを抑制することが示されています。しかしながら、心血管死亡、全死亡への影響、臨床的重要なサブグループの特徴的な影響を証明した研究はありませんでした。「DAPA-HF」「EMPEROR-Reduced」のデータを用いて、駆出率の低下した心不全において、致死的、非致死的心不全、腎アウトカムに対して、SGLT2阻害薬の与える影響を算出するために、糖尿病の有無に関わらず、SGLT2阻害薬の心血管アウトカムへの影響を評価した2つの大規模試験の事前設定メタ解析を実施しました。主要評価項目は全死亡までの時間としました。さらに、心血管死亡、心不全入院の複合リスクの事前設定サブグループ治療への影響を評価しました。サブグループは2型糖尿病の状態、年齢、性別、アンギオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(angiotensin receptor neprilysin inhibitor: ARNI)治療、NYHA機能クラス、人種、心不全入院の既往、推算糸球体濾過量、BMI、地域を含みました。治療相互作用に関してCochranのQ検定、イベント発生評価項目までの時間に関してCox比例ハザードモデルからハザード比を算出しました。Lin-Wei-Yang-Yingモデルにて、発生率に基づいてイベント再発を解析しました。結果、2つの試験から8474例、推算治療効果は全死亡13%減少(pooled HR 0·87, 95% CI 0·77–0·98; p=0·018)、心血管死亡14%減少(0·86, 0·76–0·98; p=0·027)を認めました。SGLT2阻害薬は心血管死亡、心不全入院の複合リスク26%減少(0·74, 0·68–0·82; p<0·0001)、心不全再入院、心血管死亡の複合リスク25%減少(0·75, 0·68–0·84; p<0·0001)と関連を認めました。腎評価項目の複合リスク38%減少(0·62, 0·43–0·90; p=0·013)を認めました。試験間の影響サイズの異質性全検定は有意ではありませんでした。蓄積治療効果は、年齢、性別、糖尿病の有無、ARNI治療、ベースラインのeGFRのサブグループにて、ベネフィットは一貫していましたが、NYHA機能クラス、人種のサブグループの治療サブグループ相互作用の可能性は示唆されました。エンパグリフロジン、ダパグリフロジンの心不全入院への効果は独立した2つの試験で一貫していました。駆出率の低下した心不全において、腎転帰、全死亡、心血管死亡を改善する可能性も示唆されました。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31824-9/fulltext
SGLT2阻害薬の心不全、心血管、腎臓への効果は、エンパグリフロジン(ジャディアンス)、ダパグリフロジン(フォシーガ)で一貫していたとのメタ解析です。ジャディアンス、フォシーガの連勝が続いています。


PAGETOP