2020/9/13、冠動脈プラークの脂質豊富壊死性コアと乾癬治療の生物学的製剤との関係について調べた研究「Treatment of Psoriasis With Biologic Therapy Is Associated With Improvement of Coronary Artery Plaque Lipid-Rich Necrotic Core: Results From a Prospective, Observational Study」の要旨をまとめました。

2020/9/13、冠動脈プラークの脂質豊富壊死性コアと乾癬治療の生物学的製剤との関係について調べた研究「Treatment of Psoriasis With Biologic Therapy Is Associated With Improvement of Coronary Artery Plaque Lipid-Rich Necrotic Core: Results From a Prospective, Observational Study」の要旨をまとめました。脂質豊富壊死性コア(Lipid-rich necrotic core: LRNC)はハイリスク冠動脈プラークの特徴で、冠動脈CT血管造影によって評価、潜在性、非閉塞性冠動脈疾患の将来のリスク増加と関連しています。乾癬(Psoriasis)の慢性炎症状態は、ハイリスク冠動脈プラークの有病率増加と関連しており、心血管事象リスクです。乾癬の脂質豊富壊死性コア、生物学的製剤の反応で脂質豊富壊死性コアがどのように変化するのかを調べるために、生物学的製剤を初めて使用する乾癬209例、冠動脈CT血管造影をベースライン、1年後、生物学的製剤を使用する前後、ヒト病理学的評価ソフトウェア(vascuCAP Elucid Bioimaging, Boston, MA)によって評価しました。中年、男性有意、心臓代謝、乾癬の状態は両群間で同様でした。結果、ベースラインにて脂質豊富壊死性コアはフラミンガムリスクスコア(β [standardized β]=0.12 [95% CI, 0.00-0.15]; P=0.045)、乾癬の重症度(β=0.13 [95% CI, 0.01-0.26]; P=0.029)と関連していました。1年後、生物学的製剤治療を受けている群は脂質豊富壊死性コアが減少(mm2; 3.12 [1.99-4.66] versus 2.97 [1.84-4.35]; P=0.028)、生物学的製剤治療を受けていない群では1年後の脂質豊富壊死性コアは有意な変化なし(3.12 [1.82-4.60] versus 3.34 [2.04-4.74]; P=0.06)でした。脂質豊富壊死性コアの変化は生物学的製剤治療を受けていない群と比べて有意(ΔLRNC, -0.22 mm2 versus 0.14 mm2, P=0.004)、心血管危険因子、乾癬重症度の調整後も有意差(β=-0.09 [95% CI, -0.01 to -0.18]; P=0.033)は一貫していました。脂質豊富壊死性コアは乾癬重症度、心血管危険因子と関連していました。さらに、生物学的製剤治療は脂質豊富壊死性コアに対して望ましい修飾を持ちました。本研究は、全身性炎症の治療、脂質豊富壊死性コアの減少の可能性のエビデンスとなりました。脂質豊富壊死性コアがどのように変化するのか、将来の心血管事象が減少するのかを評価するためには、大規模、長期の追跡、前向き研究の実施が必要です。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.ahajournals.org/doi/abs/10.1161/CIRCIMAGING.120.011199
乾癬の治療に使う生物学的製剤で、冠動脈プラークの脂質豊富壊死性コアが減少したという報告です。乾癬の薬が冠動脈プラークにも作用するかも知れないというのは驚きです。全身慢性炎症という概念があり、動脈硬化は全身慢性炎症の血管病変という考え方があります。過剰な炎症が動脈硬化の本態であり、抗炎症作用によって動脈硬化の進行は抑制出来るという考え方です。


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