2020/8/25、動脈硬化性の虚血性脳卒中後のLDLコレステロール濃度目標値を70mg/dL未満とした場合の頸動脈硬化の評価を調べた研究「Carotid Atherosclerosis Evolution When Targeting a Low-Density Lipoprotein Cholesterol Concentration <70 mg/dL After an Ischemic Stroke of Atherosclerotic Origin」の要旨をまとめました。

2020/8/25、動脈硬化性の虚血性脳卒中後のLDLコレステロール濃度目標値を70mg/dL未満とした場合の頸動脈硬化の評価を調べた研究「Carotid Atherosclerosis Evolution When Targeting a Low-Density Lipoprotein Cholesterol Concentration <70 mg/dL After an Ischemic Stroke of Atherosclerotic Origin」の要旨をまとめました。「TST」(Treat Stroke to Target)研究では、大心血管事象リスク低減を目指したLDLコレステロール濃度の治療目標値を70mg/dL未満とするベネフィットを、虚血性脳卒中、脳血管の動脈硬化性狭窄を認める2860例において証明しました。頚動脈の動脈硬化の評価への影響については十分にわかっていませんでした。「TST-PLUS」(Treat Stroke to Target-Plaque Ultrasound Study)研究は、LDLコレステロール濃度70未満の201例、LDLコレステロール濃度の治療目標値100mg/dLに設定した212例を対象に、治療目標値の達成、スタチンの使用、選択、用量、必要に応じてエゼチミブを追加、エコー検査技師による頚動脈エコー検査を、ベースライン、2年後、3年後、5年後に評価、「M’Ath」ソフトウェアにて解析を実施しました。全ての画像データは頚動脈エコー検査機から直接、「Intelligence in Medical Technologies」のデータベースにアップロードされました。中央研究所にて、無作為化後、盲検にて、両側の総頸動脈の内膜中膜複合体厚(intima-media thickness: IMT)を測定しました。主要評価項目は、Mannheimコンセンサス診断基準に基づいた、頚動脈分岐部または内頚動脈の新規の動脈硬化性プラークの診断、総頸動脈の内膜中膜複合体厚の変化の両群間比較としました。結果、中央値3.1年間の追跡、低値目標群はLDLコレステロール濃度は64mg/dL、高値目標群は106mg/dLを達成しました。高値目標群と比べて、低値目標群は新規に診断された頚動脈プラークは同等(46/201 (5-year rate, 26.1%) versus 45/212 (5-year rate, 29.7%)でした。総頸動脈の内膜中膜複合体厚の変化は、高値目標群-2.69µm(95% CI, -6.55 to 1.18)、低値目標群-10.53µm(95% CI, -14.21 to -6.85)、絶対群間差-7.84µmで、有意差(95% CI, -13.18 to -2.51; P=0.004)を認めました。虚血性脳卒中、動脈硬化を認める例において、LDLコレステロールの目標値を70mg/dLに設定することは、LDLコレステロールの目標値を90から100mg/dLに設定した場合と比べて、新規の頚動脈プラークを減少させませんでしたが、頚動脈の動脈硬化を有意に退縮を認めました。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32594766
「Treat Stroke to Target」試験の追跡研究、「Treat Stroke to Target-Plaque Ultrasound Study」試験の結果です。LDLコレステロールの治療目標値を、90-110に設定した場合と、70未満に設定した場合と、低いほうが頚動脈内膜中膜複合体厚が退縮効果に差を認めたという報告です。両群間の差は7.84µmとのことで、熟練の臨床検査技師さんによってかなり正確に定量評価しないとわからない程度の微々たる差ではありますが、一応これがLDLコレステロール70未満を達成すれば頚動脈プラークは退縮可能というエビデンスです。脂質異常症を治療するのであれば、LDLコレステロール100未満、70未満を目指そうという根拠です。詳しくは主治医とご相談ください。
「Treat Stroke to Target」試験については以前のまとめをご覧ください。
「2020/1/2(金)、虚血性脳卒中後の脂質管理目標値について検討した研究「A Comparison of Two LDL Cholesterol Targets after Ischemic Stroke: Treat Stroke to Target」の結果をまとめました。」
https://ochanomizunaika.com/13720


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