2020/11/6、腹部大動脈瘤とくも膜下出血との関係について調べた研究「Abdominal aortic aneurysm is associated with subarachnoid hemorrhage」の要旨をまとめました。

2020/11/6、腹部大動脈瘤とくも膜下出血との関係について調べた研究「Abdominal aortic aneurysm is associated with subarachnoid hemorrhage」の要旨をまとめました。頭蓋内動脈瘤(intracranial aneurysms: IA)と腹部大動脈瘤(abdominal aortic aneurysms: AAA)は同じようなリスク因子が共通していますが、脳動脈瘤と腹部大動脈瘤の関係は十分にわかっていませんでした。過去の研究からは、腹部大動脈瘤があると脳動脈瘤リスク上昇するとの報告はありますが、腹部大動脈瘤におけるくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage: SAH)の発生率は十分にわかっていません。長期追跡データを使用、腹部大動脈瘤と診断を受けている場合の脳動脈瘤性くも膜下出血の発生率を評価しました。2004年から2014年、大規模民間保険者の医療費請求データから、過去に腹部大動脈瘤と診断を受けた例、脳動脈瘤性くも膜下出血の発生率、脳動脈瘤性くも膜下出血の確定診断を調べました。結果、腹部大動脈瘤の診断62910例、年齢性別一致の対照群と比較しました。両方の集団は女性が多く(70.9%)、平均年齢70.8歳でした。高血圧の有病率(69.7% vs 50.6%)、喫煙率(12.8% vs 4.1%)は腹部大動脈瘤群は対照群と比べて、有意に高率(p<0.0001)でした。腹部大動脈瘤群のうち脳動脈瘤性くも膜下出血入院5例(26/100 000 patient-years, 95% CI 19 to 44)、対照群の脳動脈瘤性くも膜下出血入院115例(7/100 000 years, 95% CI 6 to 9)、腹部大動脈瘤群の発症率比(giving an incidence rate ratio: IRR)3.6(95% CI 2.6 to 5.0, p<0.0001)、基礎疾患調整後発症率比は2.8(95% CI 1.9 to 3.9)でした。腹部大動脈瘤群において脳動脈瘤性くも膜下出血の発生率は高く(7 vs 2/100 000 years)、発生率比4.5(95% CI 3.2 to 6.3, p<0.0001)、有意差を認めました。くも膜下出血の発生率は基礎疾患調整後も腹部大動脈瘤あり群で上昇していました。危険因子上昇例において、腹部大動脈瘤はくも膜下出血の強い予測因子でした。共通の遺伝子的因子、環境危険因子が、腹部大動脈瘤とくも膜下出血の共通する関連因子がないかさらなる研究が必要です。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33158992
くも膜下出血も腹部大動脈瘤も共通の危険因子として、高血圧、喫煙の2大危険因子が共通していますから、当たり前っちゃ当たり前の結果です。基礎疾患調整後にも関連を認めたとのことで、遺伝的に血管が弱い、動脈瘤を作りやすい体質等も背景にはあるのかも知れません。実際に当院でも大動脈瘤や大動脈解離の家族歴が濃厚な方、くも膜下出血、脳動脈瘤の家族歴が濃厚な方は脳動脈瘤や大動脈瘤が見つかることはしばしば経験します。


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