2020/11/16、年齢50歳から75歳、心血管事象一次予防のためのスタチンの有益性のために必要な時間の評価について調べた研究「Evaluation of Time to Benefit of Statins for the Primary Prevention of Cardiovascular Events in Adults Aged 50 to 75 Years: A Meta-analysis」の要旨をまとめました。

2020/11/16、年齢50歳から75歳、心血管事象一次予防のためのスタチンの有益性のために必要な時間の評価について調べた研究「Evaluation of Time to Benefit of Statins for the Primary Prevention of Cardiovascular Events in Adults Aged 50 to 75 Years: A Meta-analysis」の要旨をまとめました。ガイドラインの推奨では、期待余命が介入により有益性を得るための時間(time to benefit: TTB)よりも長い場合、高齢者へ予防的介入の対象とすることを推奨しています。スタチン治療の有益性を得るための時間は十分にわかっていませんでした。50歳から75歳の成人において、スタチンの主要有害心血管事象の初発の一次予防のための有益性を得るための時間を調べるために、無作為化臨床試験の生存メタ解析を実施しました。2020年までに出版された文献を、Cochrane Database of Systematic Reviews and US Preventive Services Task Force、MEDLINE、Google Scholarにて検索、過去の系統レビューを特定しました。55歳以上の成人に限定、スタチンの一次予防に関する無作為化臨床試験を対象に、2名の執筆者、対照群、介入群の生存データを独立して解析しました。Weibull生存曲線、無作為化影響モデルを使用、介入群と対照群の蓄積絶対リスク減少(absolute risk reductions: ARR)を算出しました。マルコフ連鎖モンテカルロ法を適応、絶対リスク減少の時間を調べました。主要評価項目は各試験で定義された主要有害心血管事象の初発、絶対リスク減少、0.002、0.005、0.010までの時間としました。各試験の主要有害心血管事象の定義は概ね同様で、心筋梗塞、心血管死亡等を含んでいました。結果、8試験、65383例、男性66.3%を特定しました。平均年齢55歳から69歳、追跡中央値2年から6年でした。8つのうち1本の研究のみが、スタチンによる全死亡の低下を示してました。メタ解析の結果、スタチン投与を100例に行った場合、主要有害心血管事象1例を回避す(ARR = 0.010)るためには、2.5年間(95% CI, 1.7-3.4)必要であると推算されました。200例のうち主要有害心血管事象1例を回避(ARR = 0.005)するためには、有益性を得るために必要な時間は1.3年間(95% CI, 1.0-1.7)、一方で、500例のうち主要有害心血管事象1例を回避(ARR = 0.002)するために、有益性を得るために必要な時間は0.8年間(95% CI, 0.5-1.0)でした。本初見から、50歳から75歳、基地の心血管疾患の既往なし、100例スタチン投与することで、2.5年間で1例の主要有害心血管事象を予防可能であることが示唆されました。スタチンは50歳から75歳の成人で、期待余命が2.5年間以上である場合には、主要有害心血管事象の初発の予防のために役立つ可能性があります。死亡率に対する有益性のエビデンスは認められませんでした。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33196766
スタチン投与の有益性を得るためには何年間必要か?絶対リスク減少(ARR = 0.010)を得るために必要な時間は2.5年間であることがわかりました。期待される余命(life expectancy)が2.5年間以上である場合は、高齢であってもスタチン投与は有益ではないかと論文ではまとめています。0.010の絶対リスク減少の価値、100例に投与して1例の主要有害心血管事象の回避することの価値をどう評価するかは個人によって違うのかとも感じました。詳しくは主治医とご相談ください。
メディカルトリビューンでも記事になっていました。
https://medical-tribune.co.jp/news/2020/1127533737


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