2020/11/8、発症時刻不明の脳卒中に対して画像診断ガイドのアルテプラーゼ静注に関して系統レビュー、メタ解析「Intravenous alteplase for stroke with unknown time of onset guided by advanced imaging: systematic review and meta-analysis of individual patient data」の要旨をまとめました。

2020/11/8、発症時刻不明の脳卒中に対して画像診断ガイドのアルテプラーゼ静注に関して系統レビュー、メタ解析「Intravenous alteplase for stroke with unknown time of onset guided by advanced imaging: systematic review and meta-analysis of individual patient data」の要旨をまとめました。発症時刻不明の脳卒中は以前は血栓溶解療法の適応外でした。画像検査にて救済可能な組織があると特定された例において、アルテプラーゼ静注の有効性、安全性を確率するために、2020年までに公開された記事の個別データの系統レビュー、メタ解析を実施しました。発症時刻不明の脳卒中、灌流・拡散MRI、拡散CT、拡散強調画像・脳脊髄液抑制反転回復法(fluid attenuated inversion recovery: FLAIR)ミスマッチを対象に、アルテプラーゼ静注と標準治療またはプラセボを無作為化試験を組み込みました。主要評価項目は、治療影響推定無条件影響ロジスティクス回帰モデル、90日後のmRS 0-1点、後遺症なしを含む機能予後良好としました。副次評価項目は90日後のmRS 0-2点、機能予後良好への変化としました。安全性の評価項目はmRS 4-6点、重症後遺症または死亡、症候性頭蓋内出血としました。結果、論文249、4試験、「WAKE-UP」「EXTEND」「THAWS」「ECASS-4」が組み込み基準を満たしました。4試験、全843例、アルテプラーゼ群429例(51%)、プラセボまたは標準治療群414例(49%)に割り振りました。良好転帰はアルテプラーゼ群420例中199例(47%)、対照群409例中160例(39%)、有意差(adjusted odds ratio [OR] 1·49 [95% CI 1·10–2·03]; p=0·011)を認め、試験間の同一性は低値(I2=27%)でした。アルテプラーゼは機能転帰改善への変化の有意な関連(adjusted common OR 1·38 [95% CI 1·05–1·80]; p=0·019)、機能自律転帰の高いオッズ比(adjusted OR 1·50 [1·06–2·12]; p=0·022)でした。mRS 4-6点、重症後遺症または死亡は、アルテプラーゼ群90例(21%)、対照群102例(25%)(adjusted OR 0·76 [0·52–1·11]; p=0·15)でした。死亡は、アルテプラーゼ群27例(6%)、対照群14例(3%)、有意差(adjusted OR 2·06 [1·03–4·09]; p=0·040)を認めました。症候性頭蓋内出血の発生率は、アルテプラーゼ群11例(3%)、対照群2例(1%)、有意差(adjusted OR 5·58 [1·22–25·50]; p=0·024)を認めました。発症時刻不明の脳卒中において、拡散強調画像・脳脊髄液抑制反転回復法ミスマッチ、拡散灌流ミスマッチを認める場合、アルテプラーゼはプラセボまたは標準治療と比べて、90日後の機能転帰良好と関連を認めました。症候性頭蓋内出血のリスク増加にも関わらず、機能転帰において正味の有益性を認めました。アルテプラーゼはプラセボと比べて、多く死亡を認めたにも関わらず、重症後遺症または死亡は減少しました。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)32163-2/fulltext
発症時刻不明の脳卒中に対する血栓溶解療法の有効性を評価した「PROSPERO」試験の結果です。出血5.58倍、死亡2.06倍と増加するものの、全体としては機能予後良好1.49倍というなんとも悩ましい結果でした。アルテプラーゼ静注療法の適応は脳卒中を起こしてしまった場合には、その場で速やかに決めなくてはならないので、事前にじっくり時間がある時に、本人、家族と十分に話し合っておく必要があります。


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