2020/11/13、心血管疾患一次予防におけるポリピル、アスピリンの効果について調べた研究「Polypill with or without Aspirin in Persons without Cardiovascular Disease」の要旨をまとめました。

2020/11/13、心血管疾患一次予防におけるポリピル、アスピリンの効果について調べた研究「Polypill with or without Aspirin in Persons without Cardiovascular Disease」の要旨をまとめました。ポリピル(polypill)とは、スタチン、複数の血圧降下薬、アスピリンの配合剤で、心血管疾患リスク減少を目指しています。「2-by-2-by-2」 階乗デザインを使用、心血管疾患の既往なしを対象に、「INTERHEART」リスクスコアを評価、ポリピル(シンバスタチン40mg、アテノロール100mg、ヒドロクロロチアジド24mg、ラミプリル10mg)またはプラセボ、アスピリン75mgまたはプラセボ、ビタミンDまたはプラセボを比較しました。ポリピル単独とプラセボ、アスピリン単独とプラセボ、ポリピルとアスピリンの組み合わせとプラセボの転帰を比較しました。ポリピル単独、ポリピルとアスピリンの組み合わせにおいて、主要評価項目は心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中、心停止蘇生例、心不全、血行再建としました。アスピリンにおいて、主要評価項目は心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中としました。安全性に関しても評価しました。結果、5713例、平均4.6年追跡しました。ポリピル軍においはプラセボと比べて、LDLコレステロール値は約19mg/dl低下、収縮期血圧は約5.8mmHg低下を認めました。主要評価項目はポリピル群126例(4.4%)、プラセボ群157例(5.5%)、21%低下(hazard ratio, 0.79; 95% confidence interval [CI], 0.63 to 1.00)を認めました。主要評価項目はアスピリン群116例(4.1%)、プラセボ群134例(4.7%)、14%低下(hazard ratio, 0.86; 95% CI, 0.67 to 1.10)を認めました。主要評価項目はポリピルとアスピリンの組み合わせ治療群59例(4.1%)、プラセボ群83例(5.8%)、31%低下(hazard ratio, 0.69; CI, 0.50 to 0.97)を認めました。低血圧、目眩の発生率はポリピル群でプラセボ群と比べて高率でした。ポリピルとアスピリンの組み合わせ治療は、心血管疾患の既往なし、心血管中程度リスク例において、プラセボ群と比べて心血管事象の発生率の低下につながりました。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33186492
ポリピル(polypill)とは、心血管疾患予防のための複数の薬剤のセットで、今回、ポリピルとアスピリンの組み合わせを投与したところ、心血管疾患は最大で31%低下したとの報告です。今回投与したポリピルの中身は、
シンバスタチン40mg
アテノロール100mg
ヒドロクロロチアジド24mg
ラミプリル10mg
アスピリン75mg
の5種類の配合です。薬剤の種類で言うと、スタチン、β遮断薬、サイアザイド系利尿薬、ACE阻害薬、抗血小板薬です。低血圧、目眩が多かったとのことで、降圧薬は少し調整を加えれば、立派な心血管疾患のための一次予防の処方です。強いて言えばサイアザイド系利尿薬は一律にはなくても良いかなという印象です。心血管疾患の一次予防をこのように機械的に行おうという取り組みは面白いですね。

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