2017年の欧州糖尿病学会(European Association for the Study of Diabetes: EASD)で発表された、日本における血圧・脂質・血糖に対する厳格な介入の効果を立証した研究「J-DOIT3」(Japan Diabetes Optimal Integrated Treatment study for 3 major risk factors of cardiovascular diseases)の結果をまとめました。2型糖尿病患者で、血圧、脂質、血糖を、より厳格に下げたほうがいいのか、今まで通りでいいのかを日本で調べた研究です。2006年から厚生労働省の戦略研究の一環として、日本全国81施設の協力のもと、全2542例、介入期間の中央値8.5年、と非常に大規模な研究です。具体的には、治療目標値として、
・「従来治療群」では、HbA1c 6.9%未満、血圧130/80未満、LDLコレステロール120未満(冠動脈性心疾患の既往がある場合100未満)、HDLコレステロール40以上、中性脂肪150未満、BMI24以下
・「強化療法群」では、HbA1c 6.2%未満、血圧120/75未満、LDLコレステロール80未満(冠動脈性心疾患の既往がある場合70未満)、HDLコレステロール40以上、中性脂肪120未満、BMI22以下
と、2群に分けて検討しました。従来治療群は文字通りガイドラインに沿った従来通りの治療目標値を設定しています。強化療法群は既存のガイドラインの治療目標値よりもさらに強力な治療目標値を目指しています。また、禁煙に関しては、強化療法群では、外来受診時に喫煙本数を報告、必要な場合には禁煙補助剤を導入と、より強力に介入しています。
結果、主要評価項目(心筋梗塞・冠動脈血行再建術・脳卒中・脳血管血行再建術・死亡)では、統計学的に有意ではなかったものの強化療法群で19%抑制しました。登録時の喫煙情報などの危険因子での補正を行なうと24%有意に抑制しました。事後解析では、総死亡及び冠動脈イベント(心筋梗塞・冠動脈血行再建術)に有意差はありませんでしたが、脳血管イベント(脳卒中・脳血管血行再建術)を58%有意に抑制しました。副次評価項目では、腎イベント(腎症の発症・進展)を32%有意に抑制、眼イベント(網膜症の発症・進展)を14%有意に抑制しました。
実は、J-DOIT3試験が行われる前は、それまでは糖尿病患者の治療について厳格に行ったほうがいいのか、そこまで厳格でなくてもいいのか、はっきりわかっていませんでした。特に、脳血管イベント、腎イベント、眼イベントを有意に抑制したこと、要するに脳卒中、慢性腎臓病、糖尿病性網膜症を有意に抑制したことは驚くべき結果です。懸念されていた重症低血糖の発生は両群とも年0.1%未満と非常に少なく、メトホルミン、DPP-4阻害薬、ピオグリタゾン等の低血糖を起こしにくい経口血糖降下薬の普及が寄与した可能性が考えられています。過去の研究では、2010年のACCORD研究(The Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes)で強化血糖コントロール群で逆説的に死亡率が上昇するなどの否定的なデータもありましたが、SU薬等の経口血糖降下薬のメインであった時代の研究であり、重症低血糖が心筋虚血や致死的不整脈を増加させてしまったのではないかという考察、かつ、今回のJ-DOIT3試験では総死亡を増加させるという結果は認められないことから、重症低血糖なく安全に血糖をしっかりと降下させることの重要性がわかったということなのではないかと考えています。また、今回は厳格な血糖管理のみではなく、血圧、脂質、禁煙、体重に関しても介入しており、単独の危険因子への介入というよりは、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙等、動脈硬化性の危険因子に対する総合的な介入が大事ということなのではないかと考えています。冠動脈イベント、総死亡に 対する長期的な効果については、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業として追跡研究を行っているとのことです。J-DOIT3試験に関して詳しくは下記ページをご覧ください。
J-DOIT3→http://www.jdoit3.jp
「J-DOIT3の結果(一般の方向け)」→http://www.jdoit3.jp/jdoit3_result_general.html
「J-DOIT3の結果(医療従事者向け)」→http://www.jdoit3.jp/jdoit3_result_medical.html
国立大学法人東京大学、国立研究開発法人国立国際医療研究センター「血糖・血圧・脂質に対する厳格な統合的治療の効果」→http://www.ncgm.go.jp/pressrelease/2017/20170913101600.html
「Effect of an intensified multifactorial intervention on cardiovascular outcomes and mortality in type 2 diabetes (J-DOIT3): an open-label, randomised controlled trial」→http://www.thelancet.com/journals/landia/article/PIIS2213-8587(17)30327-3/fulltext
医療法人社団お茶会お茶の水循環器内科院長の五十嵐健祐と申します。当院は2014年秋、「心血管疾患の一次予防」を理念に神田小川町でスタートしました。2016年春、神田神保町にお引越し、2018年春、医療法人化に伴い、循環器専門の医療機関として生まれ変わりました。我々の使命は「世の中から救えるはずの病気をなくすこと」です。世の中には救える病気とそうでない病気があります。その中で、心筋梗塞と脳卒中は血管の故障が原因であり、防ぐためには血管を守ることが重要です。我々の理念は「血管を守る」です。具体的に血管を守るためには、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、心房細動、慢性腎臓病等の心血管疾患の危険因子に対して適切な治療介入と治療継続が大切です。一方で、多くの医療機関の外来が空いている平日日中は、現代人の生活で仕事や用事があることは普通のことであり、仕事をしながらの治療継続には大きな負担が伴います。我々はそこのミスマッチを解決するために、夜間も土日も診療をオープンにし、心血管疾患の危険因子に対して適切な治療介入と治療継続を行っています。しかしながら残念なことに、土日も夜間も診療をしていると、お茶会の理念とは無関係に、ただ夜も空いているから、ただ土日もやっているから、ただ便利だからという理由だけで患者さんが殺到し過ぎてしまい、2018年冬、一時期は診療体制の維持が困難な事態に陥ってしまいました。
医療法人社団お茶会ミッション→https://ochanomizunaika.com/mission
「その医療は心筋梗塞を減らすだろうか?」という行動規範のもと、ゼロベースで全ての診療体制の見直しを実施しました。熟考の結果、循環器特化という選択と集中、意思決定を行い、2018年春に医療法人化に伴い、「お茶の水循環器内科」として再スタートを切りました。「血管を守る」を理念に、今後とも夜間も土日も診療をオープンにし、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、心房細動、慢性腎臓病等の心血管疾患の危険因子に対して適切な治療介入と治療継続を実現していくことで、心筋梗塞と脳卒中を防ぎ、「世の中から救えるはずの病気をなくすこと」、これが我々の使命です。詳しくは上記ページに医療法人社団お茶会のミッションをまとめましたのでご覧ください。新しく生まれ変わったお茶の水循環器内科をどうぞよろしくお願いいたします。
医療法人社団お茶会理事長五十嵐健祐
【具体的な診療範囲】
当院は循環器専門の医療機関です。循環器とは心臓と血管を専門に診る診療科です。具体的には、狭心症、心筋梗塞などの冠動脈疾患、抗血小板療法、抗凝固療法、心房細動を始めとする不整脈、高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病、慢性心不全などの循環器疾患です。循環器の診療範囲を具体的にまとめました。
・冠動脈疾患(急性心筋梗塞、労作性狭心症、他)
・心筋梗塞後、ステント留置後の管理、抗血小板療法
・慢性心不全の管理
・心臓弁膜症(僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、他)
・人工弁置換術後の管理、抗凝固療法
・心筋症(拡張型心筋症、肥大型心筋症、他)
・不整脈(上室期外収縮、心室期外収縮、房室ブロック、心房細動、他)
・心房細動の抗凝固療法、心原性脳塞栓症の予防
・脳卒中、脳血管障害、脳梗塞(ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症)、脳出血、くも膜下出血、一過性脳虚血発作、脳卒中後の管理、二次予防、再発予防
・高血圧症、二次性高血圧症
・脂質異常症、家族性高コレステロール血症
・糖尿病、糖尿病合併症の管理
・慢性腎臓病
・睡眠時無呼吸症候群
・その他、健診の再検査、食事指導、運動指導、禁煙外来、など
以上、心臓と血管を専門に診る診療科が循環器です。脳梗塞や脳出血等の脳血管障害、脳卒中は脳神経内科や脳神経外科が診ることも多いですが、どちらも血管の故障の予防という意味では一次予防、二次予防としてやるべきことは循環器と共通です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病等の生活習慣病も循環器病のリスク因子という点で循環器の守備範囲です。心筋梗塞や脳卒中にならないようにする、なってしまっても再発しないようにする、というのが循環器の仕事です。
【当院で対応していないもの】(2018/4/1更新)
当院で対応していないものを具体的にまとめました。定期的に見直しを行っていますので、ご来院の前には必ずご確認ください。ご来院いただいても受付にて適切な診療科のご紹介の対応となることを予めご了承ください。下記に具体的にまとめましたので、診療科探しの際にご参考ください。
・発熱、インフルエンザ等→一般内科
・喉痛み、鼻づまり等→耳鼻咽喉科
・咳、痰等→呼吸器内科
・吐気、下痢、腹痛等→消化器内科
・花粉症、アレルギー等→アレルギー科
・不眠、不安等→心療内科等
東京都の医療機関探しは、東京都医療機関案内ひまわり(☎ 03-5272-0303)をご活用ください。幸い、首都圏には夜間や土日も診療しているクリニックは当院以外にも最近少しづつ増えて来ています。随時紹介状の発行も行っていますのでお気軽にご相談ください。ご理解とご協力のほどよろしくお願いいたします。
【お茶の水循環器内科禁煙宣言2018】
喫煙は循環器疾患の明らかな危険因子です。煙草に対する当院の診療指針をまとめました。
1、当院は全ての喫煙者に対して禁煙を全ての治療に優先します。
煙草は1本から有害です。当院の診療指針として、具体的には、喫煙者で血圧高値の場合はまずは禁煙を優先とし、禁煙後もなお血圧高値を認める場合に限り、高血圧症に対する治療を考慮という診療指針とします。なぜなら、有害物質を摂取している場合、国民医療費を使った降圧薬等による薬物治療よりも先に有害物質の摂取の見直しが優先であると当院は考えるからです。
2、ニコチン依存状態の方には全例禁煙外来を紹介します。
近年普及傾向の加熱式タバコ、電子タバコ等にも大量のニコチンが含まれており、ニコチン依存状態であることに何の変わりはありません。いずれも、ニコチンからの根本的な離脱がゴールです。
3、それでも禁煙しない喫煙者は最終喫煙後8時間以上空けて受診ください。
喫煙者の呼気からは最終喫煙後8時間に渡って一酸化炭素等の有害物質が検出されることがわかっています。当院では呼気煙も含む受動喫煙防止の観点から、どうしても禁煙をしない場合でも最終喫煙後8時間以上空けてご来院ください。喫煙者は呼気煙を通して最終喫煙後8時間に渡って周囲の方へ健康被害を与える危険性があり、喫煙者が当院通院中の非喫煙者に対して健康被害を与えることがあってはならないと当院は考えるからです。
4、当院のスタッフは全て非喫煙者です。医療従事者として当然のことですが、当院はニコチン依存状態の人を採用しません。医療従事者だけではなく、日本から喫煙者がいなくなり、喫煙及び受動喫煙の健康被害に苦しむ人がゼロになることを心から願っています。
当院の診療指針にご理解いただけない場合は他の医療機関をご紹介しています。遠慮なく主治医または受付までお申し出ください。