「循環器内科.com」に「スタチン」についてまとめました。
【スタチンとは】
スタチン(Statin)とは、脂質異常症の治療薬で、心筋梗塞を強力に抑制する効果が確立している薬です。循環器診療においてなくてはならない薬です。三共の遠藤章先生らの研究グループを中心に、日本から発見された薬です。
【スタチンの作用機序】
スタチンは、HMG-CoA還元酵素と呼ばれ、肝細胞内におけるメバロン酸経路におけるHMG-CoA還元酵素を阻害し、肝臓におけるコレステロールの生合成を抑制し、血中コレステロールを低下させます。また、二次的に肝臓においてLDL受容体の発現を促し、血中のLDLコレステロールの取り込みを促進、血中LDLコレステロールを低下させます。
・クレストール(ロスバスタチン)
・リピトール(アトルバスタチン)
・リバロ(ピタバスタチン)
・リポバス(シンバスタチン)
・ローコール(フルバスタチン)
・メバロチン(プラバスタチン)
2018年5月現在、6種類のスタチンが発売されています。2017年9月、クレストールのジェネリック、ロスバスタチンが登場したことで、日本国内のスタチン製剤は全てジェネリックがあることになります。
【スタチンの効果】
上記の作用機序から、全身の血管から悪玉コレステロールを回収し、動脈硬化予防、心筋梗塞を強力に抑制します。
一つエビデンスを紹介すると、2008年に発表された「JUPITER試験」は、プラセボ対照二重盲検無作為化比較対照試験で、ロスバスタチン20mg/day投与群と、非投与群で比較した結果、心血管イベントの累積発症率はロスバスタチン20mg/day投与群で44%減少(HR 0.56、95% CI:0.46-0.69、p<0.00001)という驚くべき結果となりました。試験の途中でロスバスタチンの有益性が明らかであったため、当初の試験計画よりも早期に打ち切りとなった試験です。心血管イベントの予防効果は、NNT(Number Needed to Treat)=25人と、非常に強力な予防効果です。スタチンによる強力な心筋梗塞予防効果は、他に、4S試験、WOSCOP試験、HPS試験、ASCOT-LLA試験、LIPID試験、CARDS試験、J-LIT試験、IMPROVE-IT試験、REAL-CAD試験等で、立証されています。スタチンによる心筋梗塞予防作用は、海外、国内を問わず共通です。心筋梗塞予防のためにほぼ必須な薬の一つと言えるでしょう。スタチンのエビデンスは紹介出来ないくらいたくさんあるので、ご興味がある方は循環器トライアルデータベースをご覧ください。
循環器トライアルデータベース→http://circ.ebm-library.jp/trial/index_top.html
【スタチンの適応】
スタチンの添付文書の効能効果は「脂質異常症」です。スタチンを使う目的は「心筋梗塞を防ぐこと」です。LDLコレステロールに関して脂質異常症の診断基準はLDLコレステロール 140mg/dl以上です。実臨床では、LDLコレステロールの値によりますが、LDLコレステロールの値が高い場合、家族性高コレステロール血症または家族性高コレステロール血症の疑いが強い場合、他に高血圧症、糖尿病、喫煙など冠動脈疾患のリスク因子が多くハイリスク群である場合、スタチンの適応となります。また心筋梗塞後はスタチンを使えない理由がない限り心筋梗塞の再発予防のためほぼ必須で使います。スタチンの心筋梗塞予防効果は、LDLコレステロール値を下げれば下がるほど良いということがわかっており、「the lower the better」であると表現されます。具体的な治療目標値は140未満、心筋梗塞後は100未満、可能であれば70未満、家族性高コレステロール血症の場合も100未満、可能であれば70未満、です。
【スタチンの副作用】
肝障害、筋障害の2つが二大副作用です。投与初期に起こることが多いため、スタチン開始後最初の1ヶ月程度で、LDLコレステロール値が治療目標値を達成しているかと合わせて同時に副作用がないかを採血チェックを行います。飲み始めに問題がなければその後は季節に一度、半年に一度程度のフォローで問題ないでしょう。家族性高コレステロール血症を除いて、脂質異常症は生活習慣病ですので、食事療法、運動療法も合わせて重要です。脂質異常症、家族性高コレステロール血症について、それぞれまとめましたので、ご覧ください。
・脂質異常症→http://循環器内科.com/dl
・家族性高コレステロール血症→http://循環器内科.com/fh
全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。
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