2020/3/24(火)、駆出率の保たれた心不全のリスク層別化の血清バイオマーカー因子について調べた研究「Multiple Plasma Biomarkers for Risk Stratification in Patients With Heart Failure and Preserved Ejection Fraction」の結果をまとめました。

2020/3/24(火)、駆出率の保たれた心不全のリスク層別化の血清バイオマーカー因子について調べた研究「Multiple Plasma Biomarkers for Risk Stratification in Patients With Heart Failure and Preserved Ejection Fraction」の結果をまとめました。
駆出率の保たれた心不全(heart failure with preserved ejection fraction: HFpEF)のリスク層別化は臨床においても研究においても求められています。駆出率の保たれた心不全のリスク予測因子や表現型の特徴を示すマーカーを血清から見つけるために、「TOPCAT」(Treatment of Preserved Cardiac Function Heart Failure With an Aldosterone Antagonist)研究の参加者379例、マルチプレックスアッセイの中から49種類の血清バイオマーカーについて、全死亡と心不全関連入院(all-cause death or heart failure-related hospital admission: DHFA)との関連を評価しました。別の研究、「PHFS」(Penn Heart Failure Study)の参加者の駆出率の保たれた心不全156例について検証しました。結果、2つの確実なバイオマーカー群を特定しました。1つは、線維化、組織リモデリング、炎症、腎損傷、腎機能障害、肝線維化に関わるクラスターで、もう1つは神経内分泌調節因子、電解質、メディエーター、心筋障害に関わるバイオマーカーでした。具体的には、電解質、石灰化に関わるバイオマーカーとしてFGF-23(Fibroblast growth factor-23)、OPG(Osteoprotegerin)、炎症に関わるバイオマーカーとしてTNFα(tumor necrosis factor-alpha)、可溶性TNF受容体I(soluble tumor necrosis factor-receptor I)、IL-6(Interleukin-6)、肝損傷や炎症に関わるYKL-40、メディエーターや脂質代謝に関わるバイオマーカー、FABP-4(fatty acid binding protein-4)、GDF-15(growth differentiation factor-15)、血管新生に関わるバイオマーカー、angiopoietin-2、細胞外基質のターンオーバーに関わるMMP-7(matrix metalloproteinase-7)、ST-2、NT-proBNP(N-terminal pro–B-type natriuretic peptide)でした。機械学習モデルを用いて、バイオマーカーと死亡及び入院リスクを解析したところ、有意な関係(HR 2.85 95%CI 2.03 to 4.02 p<0.0001)を認めました。MAGGIC(Meta-Analysis Global Group in Chronic Heart Failure Risk Score)リスクスコアに追加したところ、予測能は著しく向上しました。PHFS研究のコホート研究に当てはめたところ、死亡及び入院の予測力は有意に向上(HR 2.74 95%CI 1.93 to 3.90 p<0.0001)を認めました。病態生理学的な新規のバイオマーカー、機械学習によるアプローチは駆出率の保たれた心不全の予測因子、リスク層別化として有用であると論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
http://www.onlinejacc.org/content/75/11/1281
NT-proBNP、IL-6、TNFα、FABP-4はなんとなく意味はわかりますが、多種多様なバイオマーカーが特定されたことに驚きました。駆出率の保たれた心不全は単一の因子による疾病ではなく、様々な因子が複雑に関係している症候群ということでしょうか。機械学習は画像解析以外にもこのようなアプローチに有効であるということも新しい発見です。


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