2020/5/21(金)、急性脳卒中でアルテプラーゼ静注療法なしに血管内血栓除去療法を行うことの有効性、安全性についての研究「Endovascular Thrombectomy with or without Intravenous Alteplase in Acute Stroke: DIRECT-MT」の結果をまとめました。急性虚血性脳卒中において、血管内血栓除去療法を行う前にアルテプラーゼ静注を行うことのリスク、ベネフィットについては十分にわかっていません。中国、三次医療機関41施設において、急性虚血性脳卒中において、血管内血栓除去療法を行う場合に、アルテプラーゼ静注ありとなしで評価しました。発症から4.5時間以内の前方循環大血管閉塞による急性虚血性脳卒中に対し、血管内血栓除去療法単独群(thrombectomy-alone group)、0.9mg/kgのアルテプラーゼ静注と血管内血栓除去療法を併用する群(combination-therapy group)に無作為に割り振りました。非劣性の一次解析として、90日後のmRS(modified Rankin scale)スコアの両群間の差とし、調整オッズ比の95%信頼区間の下限の0.8以上を基準としました。二次転帰として、死亡、虚血領域の再灌流としました。結果、656例登録、血栓除去療法単独群327例、329例併用療法群としました。血管内血栓除去療法単独群は、アルテプラーゼ静注療法と血管内血栓除去療法の併用群と比べて、一次転帰において非劣性(adjusted common odds ratio, 1.07; 95% confidence interval, 0.81 to 1.40; P=0.04 for noninferiority)を認めました。血管内血栓除去療法前の再灌流の成功率は低値(2.4% vs 7.0%)でしたが、最終的な再灌流の成功率は大きな差(79.4% vs 84.5%)はありませんでした。90日時点における死亡率は、血管内血栓除去療法単独群17.7%、併用群18.8%でした。大血管閉塞による急性虚血性脳卒中において、血管内血栓除去療法単独は、発症から4.5時間以内のアルテプラーゼ静注療法と血管内血栓除去療法の併用と比べて、20%の信頼マージンの範囲内において機能転帰の非劣性を認めました。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2001123
脳梗塞急性期において、血管内血栓除去療法を行うのであればアルテプラーゼ静注療法は必要ないんじゃないかという意見が以前からありましたが、今回、非劣性マージン20%の範囲内ですが、アルテプラーゼ静注療法なしに血管内血栓除去療法を行うことは非劣性であるという報告です。アルテプラーゼ静注療法は出血事象も増えてしまう懸念もあるので、アルテプラーゼ静注療法が有効な症例と血管内血栓除去療法が有効な症例と使い分けのような議論の方向性になっていくのかも知れません。
2020/5/21(金)、急性脳卒中でアルテプラーゼ静注療法なしに血管内血栓除去療法を行うことの有効性、安全性についての研究「Endovascular Thrombectomy with or without Intravenous Alteplase in Acute Stroke: DIRECT-MT」の結果をまとめました。