2020/5/13、救急外来における中枢性目眩の除外のためのHINTSテストの有効性について調べた研究「Can Emergency Physicians Accurately Rule Out a Central Cause of Vertigo Using the HINTS Examination? A Systematic Review and Meta‐analysis」の結果をまとめました。目眩は救急外来において頻度の高い主訴で、その一部は急性前庭症候群(acute vestibular syndrome: AVS)と分類されます。急性前庭症候群の目眩があり、眼振があり、頭位変換で悪化し、運動失調、吐気、嘔吐を伴うものと定義される臨床的な症候群です。これらの症状は、ほとんどの場合、良性前庭神経炎(benign vestibular neuritis)に起因しますが、椎骨脳底動脈領域の脳卒中のような危険な中枢性の原因の可能性もあります。「Head Impulse test」「Nystagmus」「Test of Skew」からなる「HINTS」試験は、急性前庭症候群において、脳卒中を除外するために最前線の臨床家がベットサイドを実施するテストです。急性前庭症候群で救急外来を受診した成人において、「HINTS」試験によって中枢性目眩を除外出来るかどうか、診断の正確性を評価しました。救急医と神経内科医で診断の正確性に違いがあるかも評価しました。2009年から2019年まで、PubMed、Medline、Embase、Cochrane databaseとハンドサーチで検索、言語、研究タイプを収集しました。急性前庭症候群の症状で受診、CT検査、MRI検査、前向き研究、独立した2名の評価者によって評価しました。臨床的、統計学的異質性が低い場合は結合しました。研究の質は「QUADAS-2 tool」を用いて評価しました。無作為化影響メタ解析を、「RevMan 5」「SAS 9.3.」を用いて実施しました。結果、全617例が基準に組み込まれました。平均研究期間5.3年、椎骨脳底動脈領域の脳卒中の有病率は9.3%から44%(平均39.1%、標準偏差17.1%)でした。最も頻度の高い診断は、椎骨脳底動脈領域の脳卒中(mean ± SD = 34.8% ± 17.1%)、末梢性(mean ± SD = 30.9% ± 16%)、脳内出血(mean ± SD = 2.2% ± 0.5%)でした。「HINTS」試験は、神経内科医によって行われた場合、感度96.7%(95% CI = 93.1% to 98.5%, I2 = 0%)、特異度94.8%(95% CI = 91% to 97.1%, I2 = 0%)でした。救急医、神経内科医(神経内科または血管神経学の専修医)らを含む臨床家のコホートでは、感度83%(95% CI = 63% to 95%)、特異度44%(95% CI = 36% to 51%)でした。「HINTS」試験は、救急医によって行われた場合、急性前庭症候群の症状において脳卒中を除外するだけの十分な正確性は認めませんでした。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32167642
目眩のみの症状の場合、中枢性目眩か末梢性目眩かの鑑別は難しい場合が少なくありません。「HINTS」試験では、「Head Impulse test」「Nystagmus」「Test of Skew」の3つの身体診察所見によって鑑別をしようという試みです。詳しいスライドがありました。
https://www.slideshare.net/masatoshimizu37/1-50200639
熟練した神経内科医による「HINTS」試験は、感度96.7%、特異度94.8%と精度は高いですが、そうでない場合、感度83%、特異度44%と精度は不十分であったという報告です。日本の場合は頭部MRI撮影のハードルが高くないので、必要に応じて頭部MRIを撮影すればいいのですが、頭部MRIがすぐに撮影出来ない環境では覚えておいて損はないかも知れません。
2020/5/13、救急外来における中枢性目眩の除外のためのHINTSテストの有効性について調べた研究「Can Emergency Physicians Accurately Rule Out a Central Cause of Vertigo Using the HINTS Examination? A Systematic Review and Meta‐analysis」の結果をまとめました。